【事例解説】酔っ払った状態に責任能力はある?酩酊時に刑事事件を起こすと処罰される?
酔っ払って店の看板を壊してしまった事例を元に、酩酊状態(=酔っ払った状態)の人に責任能力が問えるのかについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
【事例】
東京都新宿区内の会社で勤務している男性A(32)は、仕事帰りに居酒屋でお酒を飲み、酔っ払った状態で同店の看板を壊して逃げたとして、器物損壊罪の疑いで警視庁新宿警察署から逮捕されました。
警察からの取り調べに対し、Aは「酔っ払っていてあまり覚えていない」と供述しています。
(※この事例はフィクションです。)
【責任能力とは】
刑法において、犯罪は責任能力がある者しか処罰されません。
つまり、責任能力がない者に対しては犯罪は成立しなくなるということになります。
「責任能力」とは、「自分がやる行為に対して是非善悪の判断ができる状態で、自分の判断に従って行動をすることができる能力」を指します。
責任能力がないと認められる場合は、心神喪失者であること、14歳未満であることの2つで「責任無能力者」として扱われます。
また、完全に責任能力があると認められない場合は、心神耗弱者であることが必要で「限定責任能力者」として扱われます。
責任無能力者に対しては処罰されず、限定責任能力者に対しては処罰が軽減されるという内容が、刑法第39条で規定されています。
- 刑法第39条(心神喪失及び心神耗弱)
心神喪失者の行為は、罰しない。
2 心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。
「心神喪失」とは、精神の障害により、行為の判断能力や行動制御能力がない状態を指します。
一方で、「心神耗弱」とは、精神の障害により、行為の判断能力や行動制御能力が著しく減退している状態を指します。
心神喪失と心神耗弱に共通している「精神の障害」には、精神病や知的障害はもちろん、飲酒による酩酊状態や麻薬などを使用した際の錯乱状態も含まれます。
酩酊状態も精神の障害に含まれるのであれば、今回の事例において、Aには完全に責任能力があったとは言えず、器物損壊罪が成立しない又は刑が軽減されるのでしょうか。
【酩酊状態における責任能力の有無】
酩酊状態は、大きく以下の3つに分類されます。
- 単純酩酊:一般的に酔っている状態
- 複雑酩酊:酒乱のような、飲酒をすると人が変わるように攻撃的になる状態
- 病的酩酊:慢性アルコール中毒のような、飲酒量に関係なく、病的な要素で急激な意識障害や幻覚症状が生じる状態
単純酩酊には責任能力が認められ、複雑酩酊には限定責任能力、病的酩酊には責任無能力が認められる傾向になっています。
「酔っ払っていて事件当時の記憶がない」という場合でも、事件当時の言動(足元がふらついていない、犯行後に逃げようとしたなど)によって、基本的に単純酩酊として責任能力が認められることがほとんどです。
今回の事例でも、Aは犯行当時の記憶があまりないと主張していますが、看板を壊した後に逃走していることもあるため、単純酩酊で責任能力があるとして器物損壊罪が成立します。
【酔っ払って刑事事件を起こしてしまったら弁護士へ】
今回の事例でAは逮捕されましたが、数日後に警察から連絡が来て任意の取り調べを要求されることもあります。
酔っ払った状態だったこともあり、事件当時のことをあまり覚えていなくて不安になる方も多くいます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、酔っ払って刑事事件を起こしてしまった方の刑事弁護活動を行った実績がある弁護士が多数在籍しています。
ご自身が酔っ払って刑事事件を起こしてしまったという方や、ご家族が酔っ払って刑事事件を起こして逮捕されてお困りの方は、24時間365日受付中の弊所フリーダイヤル(0120-631-881)までご連絡ください。
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