壁への落書きで少年が逮捕される?
壁に落書きした場合に問題となる罪と、少年が逮捕される場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部が解説致します。
【ケース】
東京都板橋区在住のAは、板橋区内の会社に勤める19歳の会社員です。
Aは友人と一緒に夜遊びをしていた際、友人から落書きをしないかと言われました。
最初Aは躊躇していましたが、友人から「他の人もやっていて周りには落書きだらけじゃないか」「スプレーは、専用の溶剤で落とせば綺麗に消えるし、壊すわけじゃないんだから」と言われて納得してしまい、閉店後の商店のシャッターや他人の家の塀、公衆トイレの壁、道路のガードレール、他人の車にスプレーで落書きをしました。
ある日、Aやその友人が落書きをしていたところ、板橋区を管轄する志村警察署の警察官がパトロールをしていて落書き行為を現認し、Aらは逮捕されました。
≪ケースは全てフィクションです。≫
【スプレーでの落書きは刑事事件に】
高架下やガードレール、商店などのシャッターなど、街中の様々な場所で文字やイラストを見かけることがあるでしょう。
そのほとんどが、所有者や管理者の許可なくスプレーなどで行われた落書きであり、刑事事件や民事事件に発展する行為です。
スプレーで行う落書きの刑事事件の側面について、落書きの対象が建物や壁なのか、それ以外の物なのかによって該当する罪が異なります。
まず、建造物を損壊した場合に成立する建造物損壊罪について、罰条は「5年以下の懲役」のみ定められていて、後述する器物損壊罪と比較すると極めて重い刑罰と言えます。
建造物損壊罪は、建造物を損壊した場合にのみ成立します。
他人の家の壁や公衆トイレなどの壁などは建造物に当たりますが、商店のシャッターや住居の塀については、「当該物と建造物との接合の程度のほか,当該物の建造物における機能上の重要性をも総合考慮」して判断されます。
該当するシャッターや壁が、簡単に取り外しできないようなものであり、建造物にとって重要な機能を果たしていると評価された場合には、建造物に当たると評価されます。
次に、ガードレールや他人の車など、建造物(及び文書等毀損罪を除く)に行った落書きの場合には、器物損壊罪が適用されます。
器物損壊罪は、刑法261条に違反し、「3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料」に処されます。
Aは友人から「スプレーは、専用の溶剤で落とせば綺麗に消えるし、壊すわけじゃないんだから」と言われています。
これについて、損壊とは単純に物を破壊したり形を変えたりする場合だけでなく、物の「効用を害する」場合に成立します。
商店のシャッターや自宅の塀に落書きをされた被害者は、恥ずかしい思いをしてすぐに消したいと思うことでしょう。
例えば、水をかければすぐに落ちるような成分のスプレーであれば、損壊にはあたらないと評価される余地があります。
しかし、「専用の溶剤で落とせば綺麗に消える」スプレーで行った落書きであれば、すぐに消すことができないという性質を踏まえ、「損壊」したと評価されます。
なお、我が国でも数年前に海外の有名な画家によるストリートアートと呼ばれるものが話題となりました。
これについては、その建物や物の所有者の捉え方次第と言えます。
所有者が「損壊」を受けたと感じた場合、建造物損壊罪は非親告罪ですので被害届を、器物損壊罪は親告罪ですので刑事告訴をすることで捜査機関による捜査が開始され、被疑者が特定された場合には刑事罰が科せられることがある、という流れになります。
※落書きの内容によって特定の相手を侮辱した場合や名誉を棄損した場合については、建造物損壊罪や器物損壊罪だけでなく、侮辱罪や名誉棄損罪などの罪にもあたります。
(建造物等損壊罪)
刑法260条 他人の建造物又は艦船を損壊した者は、五年以下の懲役に処する。よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。
(器物損壊罪)
刑法261条 前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。
【少年も逮捕される?】
≪次回のブログに続きます。≫
東京都板橋区にて、お子さんが商店のシャッターや公衆トイレの壁、他人の家の塀、道路のガードレール、他人の車などに落書きをして逮捕されてしまった場合、刑事事件・少年事件のみを取り扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部に御相談ください。