晒し行為で名誉毀損に
いわゆる晒しと呼ばれる行為で問題となる名誉毀損などの罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部が解説致します。
【ケース】
東京都板橋区在住のAは、板橋区内の会社に勤める会社員です。
Aは近隣住民である自営業のVと騒音トラブルを起こして不仲に陥り、AはVを貶めるため、SNS上で誰もが見られる公開のアカウントを開設し、「○○の会社を運営しているVは性犯罪での前科があり、服役した経験がある」と投稿しました。
数ヶ月後、Aの自宅に板橋区内を管轄する高島平警察署の警察官が来て、SNS上の投稿について聞きたいことがあるとして任意同行を求められました。
≪ケースは全てフィクションです。≫
【いわゆる晒し行為】
インターネット・スマートフォンの普及に伴い、インターネットのブログやSNSなど用いて、一般人であっても全国・全世界に情報を発信することが容易な時代になりました。
そこで、しばし自分が気に入らない人や倫理的・法的に問題のある行為などについて実名や顔写真、何かしらの行為を撮影した動画や画像などを不特定多数の者に発信する「晒し行為」などと呼ばれる私刑が横行しています。
晒し行為は、どのような罪に当たるのでしょうか。
・名誉毀損罪
晒し行為により他人の名誉を傷つける言葉を流布したり画像や動画をアップロードした場合には、名誉毀損罪が適用されます。
条文は以下のとおりです。
刑法230条1項 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
第一に、公然性について、そもそも、明治40年公布の刑法では、インターネットなどの存在は想定しておらず、専ら印刷物で情報を広めることを想定していたと考えられます。
しかし、現代では先述のとおりインターネットを通じて個人が情報を容易に発信することができるようになったため、これらも公然性が認められる場合が当然にあると考えられます。
例えば、誰しもがアクセスできるような形でアップロードしたブログやSNSなどであれば、公然性があると認められます。
他方で、現在我が国に於て広く普及しているブログやSNSの場合、特定の者にしか見られないように設定することもできるため、アップロードの方法次第で公然性が認められる事案なのかどうか、区別されます。
第二に、事実を摘示するという点について、これは条文に記載のとおり「事実の有無」を問うていません。
前科があるということを積極的に発信することは、被害者の名誉を毀損する内容の「事実」を公然と摘示したと言えますので、Aが発信した情報が「真実」であってもなくても、名誉毀損罪が成立します。
・偽計業務妨害罪
名誉毀損罪はAがV個人の名誉を害することについて適用されますが、それに加え、AはVが個人事業主として仕事をしている会社の屋号を公表しています。
これにより、Vの事業が妨害をされる恐れがあることから、偽計業務妨害罪の適用が検討されます。
条文は以下のとおりです。
刑法233条 虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
「前科があるが更生に向けて取り組んでいる」等の事情であればともかく、単に「前科がある」という内容が世間に出回った場合、消費者はその会社から商品を購入したくないという心情に陥ったり、取引先等がその会社を敬遠する恐れがあります。
このように、嘘の情報を用いて業務を妨害する行為は、偽計業務妨害罪として処罰されます。
これは、結果的に売り上げが落ちた、などの具体的な妨害の事実は必要とせず、ケースのような表現それだけで偽計業務妨害罪は成立します。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部は刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
当事務所は、名誉毀損罪や偽計業務妨害罪といったSNSなどの情報がもととなって生じた刑事事件に対応しています。
東京都板橋区にて、いわゆる晒し行為により名誉毀損罪や偽計業務妨害罪で捜査を受けている方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部に御相談ください。
在宅事件の場合、事務所にて無料で相談を受けることができます。