【薬物事件】覚せい剤の使用容疑で違法捜査が行われた場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。
~前回からの流れ~
前回は、覚せい剤取締法で、覚せい剤の使用、所持が禁止されていることや、覚せい剤使用の捜査(採尿)について解説しました。
本日は、Aさんの事件を参考にして、強制捜査と令状(許可状)について解説します。
◇Aさんの事件◇
10年ほど前に覚せい剤使用の前科があるAさんは、覚せい剤を使用した数日後に、警視庁新宿警察署の警察官に職務質問を受けましたが、Aさんは、覚せい剤を使用したことが発覚するのをおそれて、所持品検査や、任意採尿に応じず、帰路を急ぎました。
その結果、自宅直前で、警察官から持っていたカバンを取り上げられて、カバンの中に隠し持っていた、覚せい剤を使用する際に使った、使用済みの注射器が見つかってしまったのです。
その後Aさんは、裁判官の発した捜索差押許可状によって、病院に強制連行されて、強制採尿された後に、覚せい剤の使用容疑で逮捕されてしまったのです。
(前回の◇覚せい剤の使用容疑で逮捕◇を要約)
◇強制捜査と令状◇
覚せい剤使用事件などの刑事事件では、警察や検察といった捜査機関が事件の捜査を行います。
その捜査は、強制力をもち強制的に行うことのできる強制捜査と、任意で行われる任意捜査に分けられますが、犯罪捜査は任意捜査を基本としており、任意捜査に限界がある場合に限り、強制捜査が許されます。
強制捜査には、逮捕や、逮捕に伴う捜索差押を除いて、裁判官の発する令状(許可状)が必要となります。
強制捜査は、文字通り、強制的に行われる捜査です。
代表的なものとしては、身体拘束をして捜査する逮捕を伴っての捜査や、家等に立ち入って捜索する家宅捜索、尿を強制的に採取する強制採尿などが挙げられます。
これらの捜査は強制的に行われますから、任意捜査と違って拒否することはできません。
しかし、こうした強制捜査は被疑者・被告人の権利を侵害することにもなります。
逮捕されれば身体拘束により自由がきかなくなりますし、勝手に家の中に入ってこられたり意思に反して自分の尿を取られたりすることも元々その人が持っているはずの権利を侵害する行為であることは想像にたやすいでしょう。
ですから、刑事事件であればなんでも強制捜査ができるわけではありません。
権利を侵害することを最小限に、かつ適切な場合にとどめるために、強制捜査を行うための原則が定められています。
それが、令状主義といわれる原則です。
令状主義とは、逮捕や家宅捜索等の強制捜査(強制処分)は、裁判所の発行する令状がなければ行うことができないという原則です。
皆さんもドラマなどで「逮捕状」「捜索差押許可状」などといった言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。
これらの令状がなければ、強制捜査はすることができません。
先ほど触れたように、強制捜査は被疑者・被告人の意思に反して強制的に行われる捜査でその権利を侵害する行為となりますから、捜査機関が強制捜査を濫用しないよう、本当に強制捜査が必要な場合であるのかどうか、裁判所のチェックを通すということなのです。
つまり、令状によらない強制捜査は令状主義に反することになり、違法捜査となるのです。
◇強制捜査は法律で認められている◇
なお、この令状主義は憲法に定められています。
憲法33条
何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。
憲法35条
1項 何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第33条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。
2項 捜索又は押収は、権限を有する司法官憲が発する各別の令状により、これを行ふ。
◇強制捜査に関する法律相談◇
刑事事件にはこのように、憲法にも定められているような主義や原則がありますが、一般の方がこれらすべての主義や原則を理解しているわけではないでしょう。
その点、刑事事件に強い弁護士であれば、こうした刑事事件の主義や原則を理解しながら、被疑者・被告人本人やそのご家族にアドバイスをすることが可能です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部では、刑事事件専門の弁護士が初回無料法律相談や初回接見サービスを承っています。
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