保護責任者遺棄致死罪で上訴(控訴/上告)

保護責任者遺棄致死罪で上訴(控訴/上告)

保護責任があるにもかかわらずその責務を怠った結果被害者が死亡してしまった保護責任者遺棄致死罪についての罪と、上訴の手続きについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部が解説致します。
【ケース】
東京都北区王子在住のAは、北区王子にある会社に勤める会社員です。
Aはひとり親で、生まれて間もない子どもVと2人で生活していました。
そのためAは普段は就業後は自宅に帰っていましたが、子育てに疲れてしまい、Vを家に残したまま数日家に帰らない生活をしていました。
通っていた保育施設からの通報を受けて臨場した北区王子を管轄する王子警察署の警察官は、Aの自宅でVの死亡が確認されたため、Aを保護責任者遺棄致死罪で逮捕しました。

Aは起訴され、一審で懲役4年の実刑判決を受けました。
判決言い渡しの際、裁判官から「不服がある場合には14日以内に手続きをしてください。」と言われ、上訴を検討しています。

≪ケースはすべてフィクションです。≫

【保護責任者遺棄致死罪とは?】
同居している未成熟の子ども、高齢者、身体障碍者や、自分が怪我をさせた相手、一緒に酒を飲んでいた泥酔者など、保護(食事を与える、空調を整備する、病院に連れていく/救急通報する等)の義務があると認められる者を、保護責任者と呼びます。
保護責任者がその責務を放棄した結果、対象者が死亡してしまった場合には、保護責任者遺棄致死罪が適用されます。
条文は以下のとおりです。

刑法218条 老年者、幼年者、身体障害者又は病者を保護する責任のある者がこれらの者を遺棄し、またはその生存に必要な保護をしなかったときは、三月以上五年以下の懲役に処する。

【上訴(控訴/上告)の手続きについて】
・上訴とは?
我が国では三審制が採られています。
簡単に説明すると、はじめに言い渡される判決を一審(原審)と呼び、それに対する不服がある場合は控訴を申し立て二審(控訴審)を受け、それに対しても不服がある場合には上告を申し立てて三審(上告審)に移ります。
この控訴上告をあわせて上訴と呼びます。
上訴は、被告人自身やその弁護人、法定代理人等が行うことができます。
また、上訴は検察側にも認められているので、検察官が上訴することも可能です。
弁護人/検察官の双方が上訴するというケースもあります。

・控訴審
一審の判決に不服がある場合には、控訴をすることができます。
控訴は、一審の判決を受けた日の翌日から数えて14日以内に「控訴申立書」という書類を提出する必要があります。
その後、控訴した側(弁護人/検察官)は控訴趣意書という書類を提出しなければなりません。
控訴趣意書の提出期限は、控訴申立書の提出から3ヶ月程度経った後を指定されます。

控訴するためには、控訴理由が必要です。
控訴理由には、一審での手続きの瑕疵(ミス)のほか、法令解釈の誤り、事実誤認、量刑不当などがあります。
控訴審では、控訴趣意書に記載した控訴理由についてのみ審理を行うことが原則です。
そのため、控訴趣意書の内容は極めて重要です。

控訴審では、(被告人が死亡した場合などの公訴棄却、控訴した者が取下げた控訴取下げを除き)「公訴棄却」か「破棄自判」にするか、「破棄差戻」というかたちで審理をやり直すという判決があります。

刑事裁判の場合、一審が簡易裁判所で行われても地方裁判所で行われても、控訴審は高等裁判所で行われます。

・上告審
控訴審の結果に不服がある場合、被告人(弁護)側/検察側はそれぞれ上告を申し立てることができます。
上告審は控訴審よりも要件が厳しく、「憲法違反があった」あるいは「判例違反があった」場合にのみ行うことができ、控訴審の場合の理由として挙げられる量刑不当や事実誤認などは上告の理由となり得ません。
但し、裁判所の職権で量刑不当や事実誤認による原判決の破棄が認められています。
実務上、「憲法違反」「判例違反」の主張は上告全体の30%で、量刑不当による職権発動を求める上告は少なくありません。

上告審は最高裁判所で行われます。

【上訴は刑事事件専門の弁護士へ】
ここまで、上訴控訴上告)の概要について説明致しました。
先に触れたとおり、控訴上告は要件が厳しいため、一審での対応が極めて重要です。
とはいえ、一審で思うような主張ができなかったという場合もあるでしょう。
上訴はある意味でのラストチャンスですので、後悔のない弁護活動を行うためには、刑事事件専門の弁護士に弁護を依頼することをお勧めします。

東京都北区王子にて、御家族が保護責任者遺棄致死罪で実刑判決を受け、上訴控訴上告)を検討されている方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部に御連絡ください。

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