【弁護士が解説】生成AIで作出された画像等が児童ポルノ処罰法に該当する可能性について
近年,様々な分野で活用が見込まれている「生成AI」について,次のような報道がなされています。
生成AI、児童ポルノ画像を学習か…専門家「被害者の人権侵害恐れ」
AIによる画像の生成と児童ポルノとはどのような関係になるのでしょうか。
刑事事件を中心に扱う東京支部長弁護士足立直矢が以下の事例をもとに解説していきます。
事例
(事例はフィクションです)
Aさん(東京都在住・20代男性)は,自宅のパソコンからインターネット上でアダルトサイトを閲覧していたところ,好みの女性の画像を見つけてダウンロードしました。
そのサイトでは,「画像はAIにより自動的に作成されたものを含みます」との表示がありました。
後日,警視庁サイバー犯罪対策課の警察官がAさんの自宅に捜索差押えにやってきて,「あなたには児童ポルノ所持の疑いがある」として,パソコンやスマートフォンを押収してしまいました。
Aさんは急な出来事に戸惑い,刑事事件に強い弁護士へ相談することにしました。
児童ポルノに関する法律
児童ポルノの所持や販売については,「児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」という法律によって規制がなされています。
題名が長くて分かりにくいですが,要するに児童買春と,児童ポルノの2つについてまとめて規制するという法律になります。
ここで児童ポルノとは,①18歳未満の者の,②性交,性交類似行為,性器に触れる行為,衣服の一部または全部をつけておらず性的な部位が露出している,③画像,動画,又はそのデータで視覚によって確認できるもの,になります。
児童ポルノに該当するかどうかは
①:被写体
②:どのような行為の様子
③:どのような媒体のものか
という点を見て判断することになります。
なお,法律には注意書きで「児童ポルノに関する規定を濫用してはいけない」とも規定しています。
これはどういうことかというと,特に,②児童が衣服の一部または全部をつけていない様子について,正当な理由の下に動画や画像を作成する場合があるということです。
最も分かりやすいのは,医療の現場で手術の様子を録画することがありますが,このような場合にも児童ポルノの製造罪が成立するとなると,医療が行えない場合があり得ます。また,そこまで大袈裟な話ではなかったとしても,例えば「子供を持つ両親が子供が庭のプールで水浴びをしていた状況をホームビデオで録画していた」という場合を考えてみましょう。
子供の成長記録として写真や動画を残すこともあるでしょうが,この時,「児童が衣服の一部を身につけていなかった」として児童ポルノに該当するというのは不合理な判断になってしまいます。もちろん,これを児童ポルノとして販売したり譲渡したりすることは許されませんが,そうでない限り,「我が子の成長記録」を残すことまで法律は禁じられません。
児童ポルノの所持に対しては,1年以下の懲役又は100万円以下の罰金が,他人に提供する目的で製造した場合には3年以下の懲役又は300万円以下の罰金が科せられます。
児童ポルノの所持,製造罪に該当するのかどうかというのは,以下でも触れるように判断の難しい場合があります。
また児童ポルノの事件はインターネット上で行われることも多く,Aさんの事例のように突然サイバー犯罪対策課のガサ入れがあるということも珍しくはありません。誰しも,急に仰々しい警察官が自宅にやってきたら,驚くのも無理がありません。
ご不安,ご心配なことがある方や,Aさんのように警察がやってきたことについて不安がある方は刑事事件に強い弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。児童ポルノに該当するのかどうか,警察が来た後どのように対応したらよいのかという点について,弁護士とご相談いただけます。東京支部(新宿駅最寄り)でのご相談は0120−631−881にて受け付けています。
AIによる画像は児童ポルノになるのか?
Aさんの事例のように,AIで生成された未成年の人の画像や動画が児童ポルノに該当する場合がありうるのでしょうか。AIによって作成されたものが児童ポルノに該当するとなると,画像を生成した人は児童ポルノの製造,ダウンロードした人は児童ポルノの所持の罪に問われる可能性があるのです。
ここで一つ興味深い最高裁判所の判例があります。
令和2年1月27日に決定が言い渡された判例です。この事例では,30年以上前(児童ポルノ法律がなかったころ)に発売された児童ポルノにあたる写真を,スキャナーで取り込み素材として,画像編集ソフトを使って新たに児童ポルノに該当するような画像を作成したというものです。
簡単に言うと,「実在する人の児童ポルノ画像をベースにして,CGの児童ポルノ画像を作り直した時も犯罪になるのか」という裁判でした。
結論として,最高裁は,実在しない児童の姿態を描写したものは児童ポルノには含まれないと判断しました。一方,実在する児童の姿態を描写したものであれば,上記の最高裁の事案でも有罪の判決としています。
最高裁は,実在する児童の姿態を描写したかどうかによって判断をしており,たとえ緻密なCGを駆使して児童ポルノを作ったとしても,実在する児童の姿態でなければ児童ポルノには該当しないとなるでしょう。つまり,「リアルかどうか(本物っぽいかどうか)」ではなく,「実在する人を描いたものかどうか」によって判断が変わるということになります。
この判断に対しても様々な意見があり得るところですが,現時点での最高裁の判断基準は以上のようなものです。
そのため,AIによって生成された画像についても,「ベースとなる人,児童」が存在するかどうかによって児童ポルノに該当するかどうかが変わってくるのです。
「AIが生成したCGだから大丈夫」というわけではありません。警察が来た後どのように対応したらよいのかという方は,刑事事件に強い弁護士が在籍する弁護士あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。
「児童」と知っていたかどうか?
インターネット上でダウンロードした画像の場合,被写体の年齢について判断が付きにくい場合があるでしょう。年齢について表記があった場合や,被写体の姿態から明らかにわかる場合であれば判断が容易ですが,そうではない場合,特に「10代なのか,20代なのか,見る人によって意見が変わりそうだ」という児童ポルノの事案もあります。
そのような場合,当然「児童ポルノだとは思わなかった」と裁判でも主張をすることになりますが,警察はその逆に「児童ポルノだと分かってダウンロードしたのだろう」と強く自白を求める取調べをすると予想されます。
このように,「どちらとも言えそう」という点においては,「自白する/自白しない」という判断が,「有罪(前科が付く)/無罪」の判断に大きく影響を及ぼす場合もあるのです。
警察としても,裁判で有罪の判決を獲得するために自白が必要となる点については,より苛烈に取調べを行います。
一般の方にとって,警察の取調べに対して徹底抗戦するというのはやや不安があるところでしょう。警察の取り調べに対する適切な対応の仕方についても,刑事事件に強い弁護士にご相談ください。自白をする上で最も重要なことやその方法について,様々な事案を経験してきた弁護士がアドバイスいたします。
警視庁による児童ポルノの事件について、刑事事件に強いあいち刑事事件総合法律事務所の弁護士にご相談ください。東京支部(新宿駅最寄り)でのご相談は0120−631−881にて受け付けています。
最後に
今回は,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が児童ポルノ所持が疑われて警察が家宅捜索に来た事例について解説致しました。弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,刑事事件を専門に扱う法律事務所です。児童ポルノの事件でご家族が警察に逮捕されてしまった方や,児童ポルノでご不安なことがある方やご心配なことがある方は,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部までご連絡ください。
逮捕され身柄が拘束されている場合には,最短当日に弁護士を警察署まで派遣する「初回接見サービス」(有料)をご提供しています。警視庁本部までの初回接見は36,850円(令和6年1月1日時点,東京支部の場合)で行っています。
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