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【報道事例】路上で女性を連れ去った男性を監禁罪の疑いで現行犯逮捕|逮捕・監禁罪とは?
【報道事例】路上で女性を連れ去った男性を監禁罪の疑いで現行犯逮捕|逮捕・監禁罪とは?
今回は、東京都足立区で起きた監禁事件をもとに、逮捕・監禁罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。
<事例>
東京・足立区竹の塚の路上で20代の女性から「嫌だ助けて」などと助けを求める110番通報がありました。
捜査関係者によりますと、20代の女性Vが男性Bと一緒にいたところ、別の20代の男Aに乗用車に乗せられ、連れ去られたということです。
警視庁は八王子市内にいたAを発見し、監禁の疑いで現行犯逮捕しました。
VはAと一緒にいて、無事だということで、警視庁は女性が連れ去られたいきさつを調べています。
(※1/16に『Yahoo!JAPANニュース』で配信された「東京・足立区で女性連れ去りか 監禁の疑いで20代の男を現行犯逮捕 別の男性といたところ連れ去ったか…すでに女性を保護 警視庁」記事の一部を変更して引用しています。)
<逮捕・監禁罪とは>
今回の事例でAは監禁罪の疑いで現行犯逮捕されています。
監禁罪については、刑法第220条で以下のように規定されています。
- 刑法第220条(逮捕及び監禁)
不法に人を逮捕し、又は監禁した者は、3月以上7年以下の懲役に処する。
監禁罪は「不法に人を監禁」した場合に成立します。
一方で、「不法に人を逮捕」した場合は逮捕罪が成立します。
「不法」と規定されているように、逮捕・監禁罪に該当する行為であったとしても適法であれば犯罪にはなりません。
適法な逮捕・監禁行為については、警察官が刑事訴訟法に従って行う逮捕などが挙げられます。
逮捕も監禁も人の行動の自由を奪う行為ではありますが、「逮捕」は人の身体に対して直接的な拘束をする行為を指し、「監禁」は人が一定の区域からの脱出を不可能な状態にしたり著しく困難にしたりする行為を指します。
例えば、ロープなどを使って人の手足を縛る行為は逮捕に該当し、部屋の出入り口に鍵をかけて閉じ込める行為は監禁に該当します。
今回の事例で考えると、AはVを乗用車に乗せて連れ去っています。
車内(一定の区域)に乗せて走行しているため、Vが走行中の車内から脱出することは極めて難しいと考えられるため、AのVに対する行為は監禁に該当すると考えられます。
AのVに対する監禁行為は適法とはいえないため、今回のAの行為は監禁罪が成立する可能性が高いということになります。
<逮捕・監禁罪で逮捕されたら弁護士へ>
逮捕・監禁罪の罰則は「3月以上7年以下の懲役」で、罰金刑による罰則規定はありません。
つまり、逮捕・監禁罪による刑事事件を起こして起訴されると検察官から裁判所に対して公判請求がされ、刑事裁判が開かれることになります。
また、今回のAのように逮捕・監禁罪で逮捕された場合、逮捕後も勾留されて最大20日間身柄が拘束される可能性も十分にあります。
刑事事件で逮捕された場合、逮捕後48時間以内に身柄が警察から検察に送致され、送致後24時間以内に検察官が裁判所に勾留請求をするかどうか判断します。
時間が決まっているため、いかに迅速な対応をするかどうかが重要なポイントとなります。
そのためにも、ご家族が逮捕されてしまった場合は早急に弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、様々な刑事事件の弁護活動を担当した実績を多く持つ、刑事事件に特化した専門の法律事務所です。
すでにご家族が逮捕されている場合には、最短当日中に弁護士が接見に向かう初回接見サービス(有料)を提供しています。
実際に弁護士が本人から事実関係などを確認し、現在の状況や今後の見通しについて詳しい説明を受けることができます。
ご相談・ご依頼に関するお問い合わせは、弊所フリーダイヤル(0120-631-881)にて24時間365日受付中です。
東京都内でご家族が逮捕されてしまったという方は、まずは弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部までご相談ください。
【報道事例】自宅で母親の遺体を遺棄した疑いで男性を逮捕|遺体をそのままにするだけでも罪になる?
【報道事例】自宅で母親の遺体を遺棄した疑いで男性を逮捕|遺体をそのままにするだけでも罪になる?
今回は、埼玉県で起きた死体遺棄事件をもとに、死体遺棄罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。
【事例】
今回は、さいたま市内にある自宅で母親とみられる高齢女性の遺体を遺棄したとして、48歳の男が逮捕されました。
調べに対し、男は「わからない」と容疑を否認しているということです。
逮捕されたのは、無職の男A(48)です。
警察によりますと、遺体はAの母親B(86)と見られ、死亡してから長い時間が経っていました。
Aは、県営住宅に母親と二人暮らしで、管理者から「女性をしばらく見かけていない」と連絡を受けた警察官が遺体を見つけたということです。
警察は司法解剖して死因を調べる方針です。
(12月29日に「テレ朝news」で配信された『自宅で母親の遺体を遺棄か「女性を見かけない」と連絡 男を逮捕』記事の一部を変更して引用しています。)
【Aに問われる犯罪は?】
今回の報道事例では、Aには死体遺棄罪が成立する可能性があります。
死体遺棄罪については、刑法第190条で以下のように規定されています。
- 刑法第190条(死体損壊等)
死体、遺骨、遺髪又は棺におさめてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、3年以下の懲役に処する。
遺棄とは、死体等を移動させてから放棄・隠匿することですが、本件ではBの遺体をAは移動させておらず、単に放置していたに過ぎない可能性が高いです。
では、このような事情においても、死体遺棄罪は成立しうるのでしょうか。
この点について、判例は、法令・慣習上葬祭の義務を有する者(つまり、お葬式などを率先してあげるべき人)の場合は、場所的移転を伴わない単なる放置も不真正不作為犯として本罪の遺棄にあたる、としています(大判大正6年11月24日)。
不真正不作為犯とは、何もしていない(不作為)ことで実行行為が認められる犯罪類型のことです。
不真正不作為犯は、一定の要件をクリアすることで認定されます。
例として、赤ちゃんに対して母親が育児を何もしないで、結果として赤ちゃんが死んでしまったケース等が挙げられます。
ここで、本件を見てみましょう。
男Aは、母親Bと二人暮らしをしていました。
この事情から、母親Bにとって「法令・慣習上葬祭の義務を有する者」は、男Aと言えるのではないでしょうか。
そうすると、男Aは死体遺棄罪の主体であると結論付けることができます。
そして、男Aが家の中で母親Bの遺体を放置したことは、「場所的移転を伴わない単なる放置」であると考えられ、「遺棄」にあたると解することができます。
よって、男Aには死体遺棄罪が成立する可能性があります。
【死体遺棄罪が成立したら、刑罰はどのくらい?】
死体遺棄罪を規定する刑法第190条には、「~者は、三年以下の懲役に処する」とあります。
ですので、もし起訴され有罪にされるのであれば、三年以下の懲役の刑罰が課されることになります。
しかし、三年以下の懲役刑(又は禁固刑)には、一定の条件を満たす場合に、情状により執行猶予が付されることがあります。
執行猶予とは、以前に懲役刑や禁錮刑に処せられたことがないなど一定の条件を満たす場合に、判決で3年以下の懲役刑又は禁錮刑を言い渡すとき、情状により、刑の全部の執行またはその一部の執行を猶予することのできる制度です。
よって、男Aが一定の条件を満たす場合は、執行猶予になる可能性があります。
死体遺棄が犯罪に該当すると知らずに今までやっていたという方もいるかもしれません。
突然警察から逮捕されてしまったり、任意の取調べを受けることになってしまった場合は、早い段階で弁護士に相談してアドバイスやサポートをしてもらうことが大切です。
早期に弁護士に相談しておくことで、今後の取調べ対応の具体的なアドバイスや今後の見通しについて説明を受けることができます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、様々な刑事事件その他事件の弁護活動を担当した実績を持つ、刑事事件・少年事件に特化した専門の法律事務所です。
東京都内で刑事事件その他事件を起こしてしまったという方は、まずは弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部までご相談ください。
ご相談・ご依頼に関するお電話は、24時間365日受付中の弊所フリーダイヤル(0120-631-881)にて承っております。
【報道事例】東京都秋葉原駅で女性が刃物を振り回し4人が負傷|刺傷事件で問われる可能性がある罪は?
【報道事例】東京都秋葉原駅で女性が刃物を振り回し4人が負傷|刺傷事件で問われる可能性がある罪は?
今回は、東京都にある秋葉原駅で起きた刺傷事件をもとに、刺傷事件で問われる可能性がある罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。
【事例】
3日午後11時ごろ、東京都千代田区のJR秋葉原駅で「女が刃物を振り回している」と119番通報がありました。
東京消防庁によると40代と60代の男性2人が刺し傷を負ったとのことで、いずれも意識はあるとのことです。
このほかに2人のけが人がいるとの情報もありました。
刃物で男性らにけがを負わせたとみられる女はすでに警視庁に確保されています。
(※1/3に『Yahoo!JAPANニュース』で配信された「東京・秋葉原駅で女が刃物振り回す 4人けがの情報、警視庁が身柄確保」記事の一部を変更して引用しています。)
【刺傷事件で問われる可能性がある罪は?】
刺傷事件で問われる可能性がある罪としては、傷害罪、殺人罪、殺人未遂罪、銃刀法違反などが挙げられます。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
【傷害罪】
傷害罪は刑法第204条で以下のように規定されています。
- 刑法第204条(傷害)
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
人に対して物理的な力を加えた結果として、傷害(怪我)を負わせた場合に傷害罪が成立します。
刺傷事件では、刃物を振り回して怪我を負わせていることが多いため、傷害罪が成立することが多いです。
今回の事例でも、刃物を振り回した結果、4人が怪我を負っているため、傷害罪が成立する可能性があると考えられます。
【殺人罪・殺人未遂罪】
殺人罪は刑法第199条で以下のように規定されています。
- 刑法第199条(殺人)
人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。
殺意をもって人を殺害することで殺人罪は成立します。
「誰でもいいから殺したかった」といった動機で無差別的な刺傷事件を起こすことも少なくはありません。
このように殺意をもった状態で刺傷事件を起こし、人を死亡させた場合は殺人罪が成立する可能性が高いと考えられます。
また、殺人罪は未遂でも処罰される旨が刑法第203条で規定されています。
- 刑法第203条(未遂罪)
第199条及び前条の罪の未遂は、罰する。
つまり、殺意をもって人を殺そうとしたが結果的に死亡しなかった場合に殺人未遂罪が成立するということになります。
殺人未遂罪と傷害罪は成立する要件が似ていますが、「殺意があったかどうか」が大きな違いです。
殺意があったかどうかについては、「相手を殺す」といった主観的な気持ちだけではなく、行為によって相手が死亡する可能性が高いとわかっていたにも関わらず実行したような場合でも客観的に殺意があったと認められることもあります。
今回の事例では死者は出ていないため、殺人罪は成立しませんが、殺意があったと判断されると殺人未遂罪が成立する可能性があります。
【銃刀法違反】
銃刀法(正式名称:銃砲刀剣類等取締法)第22条では、刃体の長さが6cmを超える刃物の携帯を禁止する旨が規定されています。
今回の事例で使用された刃物について具体的な説明はありませんでしたが、銃刀法で規定されている長さを超えていれば銃刀法違反が成立する可能性もあります。
規定より短い刃物を正当な理由なく持ち歩いていた場合は、銃刀法違反ではなく軽犯罪法違反が成立する可能性があります。
【家族が刺傷事件を起こしてしまった場合はすぐに弁護士へ】
今回は、刺傷事件を起こした場合に問われる可能性がある罪について解説してきました。
刺傷事件は現行犯逮捕されることが非常に高く、逮捕後も勾留されて長期的に身柄が拘束される可能性があります。
ご家族が刺傷事件を起こして逮捕されてしまったという方は、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
すでに逮捕されている場合は、弁護士に接見を依頼することで、弁護士が直接本人から事実関係などを聞き、それらを踏まえた上での今後の見通しや現在の状況などの説明を受けることができます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、様々な刑事事件の弁護活動を担当した実績を多く持つ、刑事事件・少年事件に特化した専門の法律事務所です。
ご家族が逮捕されている場合は、最短当日中に弁護士が接見に向かう初回接見サービス(有料)をご利用いただけます。
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東京都内でご家族が刺傷事件を起こして逮捕されてしまったという方は、まずは弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部までご相談ください。
【報道事例】東京都江戸川区でひき逃げによる死亡事故が発生|問われる罪とひき逃げ事案の弁護活動
【報道事例】ひき逃げによる死亡事故が発生|問われる罪とひき逃げ事案の弁護活動
車やバイク、自転車等の自動車を運転する人は、誰しもが交通事故を起こす可能性があります。
交通事故を起こした後の行動次第では、ひき逃げとして厳しい刑事処分を受けることになるかもしれません。
今回は、東京都江戸川区で発生したひき逃げによる死亡事故をもとに、ひき逃げで問われる可能性がある罪とひき逃げ事案の弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。
【事例】
東京都江戸川区で高齢の男性が倒れているのが見つかり、死亡しました。
警視庁は、ひき逃げ事件として捜査しています。
30日午前0時半ごろ、江戸川区の路上で「男性が血を流している。意識がない」と119番通報があり、警察官が駆けつけたところ、近くに住む会社員の男性(79)が頭などから血を流した状態で見つかり、搬送先で死亡が確認されました。
男性の衣服には車にひかれたあとがあったということで、警視庁はひき逃げ事件として逃げた車の行方を追っています。
(※12/30に『Yahoo!JAPANニュース』で配信された「「男性が血を流している」ひき逃げで79歳男性死亡 深夜の東京・江戸川区で…逃げた車の行方追う 警視庁」記事の一部を変更して引用しています。)
【ひき逃げとは?】
ひき逃げとは、交通事故(人身事故)を起こした後、負傷者の救護等を行わずに現場から逃走する行為を指します。
人身事故を起こした場合、運転者は負傷者を救護しないといけない救護義務が発生します。
救護義務については、道路交通法第72条第1項で規定されていて、交通事故において人が負傷した場合、事故に関与した運転者は直ちに車両を停止させ、救護措置を取る義務があります。
また、事故の状況を警察に報告することも義務付けられています。
救護義務を怠った場合、すなわちひき逃げを行った場合、道路交通法違反となり、10年以下の懲役または100万円以下の罰金に処される可能性があります。
【ひき逃げは問われる罪は一つじゃない?】
ひき逃げは救護義務違反による道路交通法違反が問われる可能性が高いと説明しましたが、ひき逃げで問われる可能性がある罪は一つだけではありません。
ひき逃げによって、相手が負傷・死亡した場合、過失運転致死傷罪に問われる可能性が高いです。
過失運転致死傷罪については、自動車運転死傷行為処罰法(正式名称:自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律)第5条で規定されています。
今回の事例では、ひき逃げされた男性は死亡しているため、犯人が見つかった場合、過失運転致死罪に問われる可能性が高いです。
運転者が必要な注意を怠り、その結果として人の死を引き起こした場合、過失運転致死罪が適用されます。
過失運転致死罪は、故意ではないものの、運転者の不注意や不適切な行動が重大な結果を招いた場合に適用されることを意味します。
過失運転致死罪が成立すると、7年以下の懲役もしくは禁固または100万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
【ひき逃げ事案における弁護活動】
ひき逃げ事案において、弁護士の役割は非常に重要です。
適切な弁護活動は、加害者にとってより良い法的結果をもたらす可能性があります。
ひき逃げ事案では、被害者や被害者遺族との示談が重要な要素となります。
示談は、被害者や被害者遺族への賠償と謝罪を通じて、事件の解決を図るものです。
弁護士は、被害者との交渉を代行し、適切な賠償金額の設定や謝罪の方法を提案します。
この過程で、被害者の感情や要求を理解し、双方にとって受け入れられる解決策を見つけることが重要です。
弁護士は、加害者の法的権利を保護し、最も有利な結果を得るための戦略を立てます。
これには、事故の詳細な調査、証拠の収集、法的な論点の分析が含まれます。
また、裁判所や検察官に対して、加害者の状況や背景を説明し、情状酌量を求めることも弁護士の重要な役割です。
特に、初犯であり被害者との示談が成立している場合には、執行猶予付きの判決を獲得できる可能性が高まります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、ひき逃げ事件の弁護活動を担当した実績を多く持つ、刑事事件・少年事件に特化した専門の法律事務所です。
ご相談・ご依頼に関するお問い合わせは、弊所フリーダイヤル(0120-631-881)にて24時間365日受付中です。
東京都内でひき逃げ事件を起こしてしまったという方や、ご家族がひき逃げで逮捕されたという方は、まずは弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部までご相談ください。
【事例解説】示談は弁護士なしでも可能?当事者間で示談をする危険性と弁護士に依頼するメリット
【事例解説】示談は弁護士なしでも可能?当事者間で示談をする危険性と弁護士に依頼するメリット
当事者間での争いを解決することを指す「示談」を成立することは、民事事件はもちろん刑事事件でも重要なポイントになります。
刑事事件で被害者と示談を成立することができれば、事件化や逮捕・勾留を阻止できたり、不起訴処分や減刑判決を獲得できる可能性が高くなります。
そんな示談ですが、必ず弁護士を介さないといけないわけではありません。
当事者間で示談交渉を行うことも可能ですが、別のトラブルが発生することが多いです。
今回は、事例をもとに、当事者間で示談をする危険性と弁護士に示談を依頼するメリットについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。
【事例】
東京都調布市在住の男性A(42)は、仕事帰りに風俗店を利用することにしました。
Aが利用した風俗店は本番行為禁止でしたが、Aは思わず本番行為をしてしまいました。
Aの接客をしていたスタッフ女性V(24)は、Aが本番行為をしたことを店長に話し、Aは店長から「1週間以内に100万円支払わないと警察に通報する」と言わました。
警察に通報されることを恐れたAは、店長から言われた通り100万円を渡すことにしました。
しかし、後日店長から「もう100万円払わないと警察に通報する」とAに連絡がきました。
100万円を払ったことで解決していると思っていたAは、一度弁護士に相談することにしました。
(※この事例は全てフィクションです)
【示談とは】
示談とは、民事上の責任について当事者間で話し合い、お互いの合意によって解決する手続きのことを指します。
このように、示談は民事上の争いを解決する手続きを指しますが、刑事事件における示談は、加害者が被害者に対して示談金として金銭を支払い、被害届や告訴を取り下げてもらったり、加害者を許し刑事処分を求めないといった内容の書面にサインをしてもらったりする手続きを指します。
刑事事件を起こした場合に、被害者との示談を成立することができれば、事件化や逮捕・勾留されることを阻止できたり、不起訴処分や執行猶予判決などを獲得できる可能性が高まります。
【当事者間で示談をする危険性】
冒頭でもお伝えしたように、示談は当事者間のみで行うことも可能です。
ただ、法律の専門知識がない当事者同士で示談を行おうとすると本来の事件とは別のトラブルが発生する危険性が高いです。
当事者間での示談で起こりうる危険性について見ていきましょう。
①適切な金額での示談ができない
事件の内容によって示談に必要な金額は異なるため、示談金の相場というものは規定されているわけではありませんが、過去に起きた似たような事件で支払った示談金などからある程度の相場を算出することはできます。
ただ、法律に詳しくない当事者同士だと、とても適切とは言えない金額を示談金として要求されたり、早すぎる支払期日が設定されたりする危険性があります。
②示談書が正しく作成されない
示談書の内容が適切でなければ、解決したと思っていても後に蒸し返されてしまう危険性もあります。
示談の内容は当事者間同士の認識のズレがないように行わなければなりません。
示談金を支払ったのに警察に被害届が出されてしまったり、今回の事例のように後日追加で示談金が要求されたりといったトラブルが起きることも少なくありません。
当事者のどちらかが一方的に示談の内容を決め、その内容で合意してしまうと予期せぬトラブルに発展する可能性があるため注意が必要です。
③被害者から示談を拒否される
刑事事件において、被害者は加害者に対する処罰感情や怒り・恐怖などの感情が強いことが多く、当事者間での示談交渉に応じてくれないことも多いです。
警察に「示談したいから被害者の連絡先を教えてほしい」と言っても、被害者が拒否すれば警察は教えてくれません。
加えて、警察は被害者に対して示談を促すようなこともしないため、当事者間だとそもそも示談交渉を始めることができない危険性があります。
【弁護士に示談を依頼するメリット】
今回の事例で、Aは弁護士に相談して示談を依頼することにしました。
Aの代理人となった弁護士が、Aに代わって店長に連絡をして示談交渉を行い、結果として追加の示談金は支払わずに適切な書面で示談を成立させることに成功し、事件化を阻止することができました。
前述したように、当事者間での示談にはリスクが伴うため、被害者との示談を成立させたい場合は弁護士に依頼することをおすすめします。
弁護士が代理人として被害者との示談交渉を行うことで、被害者が示談交渉に応じてくれたり、適切な金額・内容での示談を締結できたりといったメリットがあり、当事者間での示談よりも成立する可能性が高まります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、様々な刑事事件の弁護活動を担当し、被害者との示談を成立させた実績を多数持つ、刑事事件・少年事件に特化した専門の法律事務所です。
ご相談・ご依頼に関するお問い合わせは、弊所フリーダイヤル(0120-631-881)にて24時間365日受付中です。
東京都内で刑事事件を起こしてしまい、被害者との示談交渉が上手くいっていないという方は、まずは弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部までご相談ください。
【報道事例】爆破予告は単なるイタズラでは済まない!爆破予告で問われる可能性がある罪は?
【報道事例】爆破予告は単なるイタズラでは済まない|爆破予告で問われる可能性がある罪は?
「〇〇に爆破予告が届きました」といった内容のニュースや新聞記事を見たことがある方も多いのではないでしょうか。
実際には爆破されずに単なるイタズラだったというケースも多いですが、爆破予告は立派な犯罪です。
今回は、東京ディズニーリゾートに爆破予告があったという報道事例をもとに、爆破予告で問われる可能性がある罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。
【事例】
千葉県浦安市の市役所にけさ、東京ディズニーリゾートに爆弾を仕掛けたという内容のメールが届き、警察などが警戒にあたっています。
メールには“京葉線の快速を廃止する報復”などと記されていたということです。
浦安市によりますと、市内にある東京ディズニーリゾートやその周辺施設に「殺傷力の高い爆弾を複数仕掛けた」といった内容のメールが市役所に届いたということです。
メールを受けて、現在、警察などがJR舞浜駅や周辺の施設で警戒にあたっています。
(※12/22に『Yahoo!JAPANニュース』で配信された「東京ディズニーリゾートに爆破予告「快速廃止するJRへの報復」警察などが警戒」記事の一部を変更して引用しています。)
【爆破予告で問われる罪は?】
爆破予告で問われる可能性がある罪はいくつか考えられますが、爆破予告で問われるもっとも典型的な犯罪は威力業務妨害罪です。
威力業務妨害罪については、刑法第234条で以下のように規定されています。
- 刑法第234条(威力業務妨害)
威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。
威力業務妨害罪は、①「威力」を用いて②人の「業務」を③「妨害させるおそれ」があることで成立します。
それぞれの要件について詳しく見ていきましょう。
①「威力」を用いて
「威力」とは、一般的に人の意思を制圧するに足る力や影響を指し、具体的には暴力行為や脅迫などが該当します。
例えば、暴行や「殺すぞ」といった脅迫行為などが「威力」にあたり、最近の裁判例では、従来の定義に完全に当てはまらない行為でも、公然と行われる妨害行為を「威力」の使用と見なす傾向があります。
②人の「業務」を
「業務」とは、職業やその他の社会生活上の地位に基づいて継続して行われる事務や活動を指します。
例えば、タクシー運転手が乗客を目的地まで運ぶ行為や、レストランの店員が料理を提供する行為は「業務」に該当します。
一方で、個人的な趣味や家庭内での活動は、通常「業務」とは見なされません。
法的には、業務妨害の対象となる「業務」は、その行為が社会生活上の活動であるかどうかによって判断されます。
③「妨害させるおそれ」がある
この「おそれ」は、行為が実際に業務を妨害する可能性があるかどうかを指します。
法的には、単に不快感を与えるだけでなく、業務の正常な運営に具体的な影響を及ぼす可能性が必要です。
例えば、爆破予告のような脅迫行為は、対象となる機関や組織の日常業務に深刻な障害をもたらす可能性があるため、「業務が妨害されるおそれ」があると判断されます。
【爆破予告は単なるイタズラでは済まない!】
今回は、爆破予告で問われる可能性がある威力業務妨害罪について解説しました。
「ちょっとおどかしてやろう」といったイタズラ心で爆破予告をしてしまったとしても、それはれっきとした犯罪行為です。
爆破予告による威力業務妨害罪が成立した場合の処罰内容は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金と規定されています。
匿名で爆破予告をしていたとしても、警察の捜査によって特定されて突然逮捕されてしまう可能性も十分にあります。
威力業務妨害罪で警察から連絡がきたり逮捕されてしまったりした場合は、早急に弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、威力業務妨害罪はもちろん、様々な刑事事件の弁護活動を担当した実績をもつ、刑事事件・少年事件に特化した専門の法律事務所です。
ご相談・ご依頼に関するお問い合わせは、24時間365日受付中の弊所フリーダイヤル(0120-631-881)にて承っております。
東京都内で威力業務妨害事件を起こしてしまったという方は、まずは弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部までご相談ください。
【報道事例】ホストクラブの「売掛金」は犯罪?売掛金の違法な回収方法が刑事事件に発展する?
【報道事例】ホストクラブの「売掛金」は犯罪に該当する?売掛金の違法な回収方法は刑事事件に発展する?
東京都新宿区歌舞伎町のホストクラブを中心に、ホストクラブの「売掛金」が問題視されてニュースや新聞などで取り上げられています。
今回は、売掛金が犯罪に該当するのか、売掛金の違法な回収方法について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。
【事例】
警視庁は15日夜、東京・歌舞伎町(新宿区)のホストクラブなどに一斉立ち入りし、風営法や都条例などの違反がないかを確認した。
捜査関係者によると、立ち入りの対象は約350店で、約130人態勢で対応した。
ホストクラブを巡っては、女性客らに支払い能力を超える高額料金を請求し、多額の借金を背負わせる悪質な店舗が問題視されている。
立ち入りでは、酒類の値段を明示しないで販売していないかなど、高額請求につながる法令違反がないかを検査した。
警視庁は悪質な違反のあった店舗については、営業停止や摘発も検討する。(以下略)
(※12/16に『Yahoo!JAPANニュース』で配信された「警視庁が東京・歌舞伎町のホストクラブ350店に一斉立ち入り」記事の一部を変更して引用しています。)
【「売掛金」とは?】
「売掛金(うりかけきん)」とは、飲食店等で発生した代金を当日に支払わずに後日回収する金額を指します。
一般的には「ツケ」と呼ばれることもあり、ホストクラブにおいてホストと客の間で利用されることが多いです。
法律的観点からみると、ホストクラブの売掛金のような代金をツケ扱いにすること自体は違法ではありません。
ただ、ホストクラブでの飲食代は数十万円~数百万円になるほどの高額請求になることもあり、多額の売掛金を支払えずにホストからの回収に追われた結果、売掛金を支払うために風俗を行うようになったり犯罪に手を染めてしまったりするケースが問題視されています。
【違法な売掛金の回収方法】
売掛金そのものについては法律上問題ありませんが、売掛金を回収するために用いた手段によっては犯罪が成立することもあります。
①住居侵入罪・不退去罪
売掛金を回収するために、客が住んでいる住居に無断で侵入したり、客から家を出るように要求されても売掛金を回収するまで退去しなかったりするといった行為は、刑法第130条で規定されている住居侵入罪・不退去罪が成立するおそれがあります。
住居侵入罪・不退去罪の処罰内容は、3年以下の懲役または10万円以下の罰金と規定されています。
②窃盗罪
売掛金を払うように要求しても客が払わないからといって、客の財布からお金を盗むような行為をしてしまうと刑法第235条で規定されている窃盗罪に該当する可能性があります。
窃盗罪の処罰内容は、10年以下の懲役または50万円以下の罰金と規定されています。
③強盗罪
売掛金を回収するために、暴行や脅迫を用いて客の反抗を抑圧して強引にお金を強取する行為は刑法236条で規定されている強盗罪が成立する可能性があります。
強盗罪の処罰内容は、5年以上の有期懲役と規定されています。
④恐喝罪
「売掛金を払わないと殺す」といった脅迫をして、客から売掛金を回収しようとする行為は刑法第249条で規定されている恐喝罪に該当するおそれがあります。
恐喝罪の処罰内容は、10年以下の懲役と規定されています。
⑤売春防止法違反
売掛金を支払えないという客に対し、売春をさせて収入を得させて売掛金を回収しようとする行為は売春防止法違反となる可能性があります。
嘘をついて売春させた場合や脅迫や暴行を加えて売春をさせた場合、売春の対償を受け取る場合など、売春させた過程によって処罰内容は異なりますが、どれも厳しい処罰内容が規定されています。
【売掛金の回収方法によっては刑事事件になることも】
今回は、売掛金の法律的な問題や、違法となる売掛金の回収方法について解説しました。
売掛金自体は法律上問題ありませんが、違法な回収方法をしてしまえば刑事事件となってしまうかもしれません。
刑事事件になってしまえば、警察や検察などの捜査機関から取調べを受けたり起訴されて処罰されたりといった不利益が生じるおそれもあります。
売掛金の回収方法に問題があって刑事事件になってしまったという方は、まずは弁護士に相談して具体的なアドバイスを受けることをおすすめします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、様々な刑事事件の弁護活動を担当した実績を多く持つ、刑事事件・少年事件に特化した専門の法律事務所です。
ご相談・ご依頼に関するお問い合わせは、24時間365日受付中の弊所フリーダイヤル(0120-631-881)にてお待ちしております。
法律相談は初回無料なので、東京都内で刑事事件を起こしてしまったという方は、まずは弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部までご相談ください。
【報道事例】東京都内で「白タク」行為をした男性を道路運送法違反の疑いで逮捕|「白タク」行為とは?
【報道事例】東京都内で「白タク」行為をした男性を道路運送法違反の疑いで逮捕|「白タク」行為とは?
今回は、東京都内で「白タク」行為をしたとして、道路運送法違反の疑いで男性が逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。
【事例】
中国人観光客を相手にタクシーを無許可営業する「白タク」行為をしたとして、警視庁新宿署は14日、中国籍の男性A(30)を道路運送法違反(有償運送禁止)容疑で逮捕したと発表しました。
発表によると、Aは国の許可を得ず、中国人観光客2人と1700元(約3万4000円)の報酬を受け取る契約を結んだ上で、2人を東京都港区のホテルから中央区銀座などにワゴン車で送迎した疑いです。
取調べに対し、Aは容疑を認めています。
新宿署はAが昨年12月以降、白タク行為を繰り返して違法に約100万円を売り上げたとみています。
(※12/15に『Yahoo!JAPANニュース』で配信された「港区のホテルから銀座などに車で送迎、中国人を「白タク」行為の疑いで逮捕…計100万円売り上げか」記事の一部を変更して引用しています。)
【「白タク」行為とは?】
「白タク」行為とは、国からの営業許可を得ずに有償で送迎を行う行為を指します。
国からの営業許可があればタクシー業としても問題ありませんが、無許可でタクシー業を行えば「白タク」行為として処罰されます。
国からの営業許可を得た通常のタクシーは緑色のナンバープレートがついていることに対して、無許可だと自家用車のままで白色のナンバープレートをつけたままタクシー業を行うため、「白タク」と呼ばれるようになりました。
【「白タク」行為で問われる罪】
事例のAのように、「白タク」行為をすると道路運送法違反に問われる可能性があります。
タクシー業のような一般旅客自動車運送事業を行う場合は、国土交通大臣の許可を受けないといけないという内容が道路運送法第4条で規定されています。
- 道路運送法第4条(一般旅客自動車運送業の許可)
一般旅客自動車運送事業を経営しようとする者は、国土交通大臣の許可を受けなければならない。
2 一般旅客自動車運送事業の許可は、一般旅客自動車運送事業の種別(前条第一号イからハまでに掲げる一般旅客自動車運送事業の別をいう。以下同じ。)について行う。
つまり、「白タク」行為は道路運送法第4条の規定に違反して一般旅客自動車運送運送業を行っているということです。
道路運送法第4条に違反した場合の処罰内容については、同法第96条第1号で「3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金」と規定されています。
【「白タク」行為で刑事事件を起こしてしまったら弁護士へ】
「白タク」行為による道路運送法違反は、事例のAのように逮捕される可能性もあります。
また、起訴されてしまえば懲役刑を言い渡されて刑務所に収容されてしまう可能性もある重い犯罪です。
「白タク」行為が犯罪に該当すると知らずに今までやっていたという方もいるかもしれません。
突然警察から逮捕されてしまったり、任意の取調べを受けることになってしまった場合は、早い段階で弁護士に相談してアドバイスやサポートをしてもらうことが大切です。
早期に弁護士に相談しておくことで、今後の取調べ対応の具体的なアドバイスや今後の見通しについて説明を受けることができます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、様々な刑事事件の弁護活動を担当した実績を持つ、刑事事件・少年事件に特化した専門の法律事務所です。
東京都内で刑事事件を起こしてしまったという方は、まずは弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部までご相談ください。
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【事例解説】酔っ払った状態に責任能力はある?酩酊時に刑事事件を起こすと処罰される?
【事例解説】酔っ払った状態に責任能力はある?酩酊時に刑事事件を起こすと処罰される?
酔っ払って店の看板を壊してしまった事例を元に、酩酊状態(=酔っ払った状態)の人に責任能力が問えるのかについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
【事例】
東京都新宿区内の会社で勤務している男性A(32)は、仕事帰りに居酒屋でお酒を飲み、酔っ払った状態で同店の看板を壊して逃げたとして、器物損壊罪の疑いで警視庁新宿警察署から逮捕されました。
警察からの取り調べに対し、Aは「酔っ払っていてあまり覚えていない」と供述しています。
(※この事例はフィクションです。)
【責任能力とは】
刑法において、犯罪は責任能力がある者しか処罰されません。
つまり、責任能力がない者に対しては犯罪は成立しなくなるということになります。
「責任能力」とは、「自分がやる行為に対して是非善悪の判断ができる状態で、自分の判断に従って行動をすることができる能力」を指します。
責任能力がないと認められる場合は、心神喪失者であること、14歳未満であることの2つで「責任無能力者」として扱われます。
また、完全に責任能力があると認められない場合は、心神耗弱者であることが必要で「限定責任能力者」として扱われます。
責任無能力者に対しては処罰されず、限定責任能力者に対しては処罰が軽減されるという内容が、刑法第39条で規定されています。
- 刑法第39条(心神喪失及び心神耗弱)
心神喪失者の行為は、罰しない。
2 心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。
「心神喪失」とは、精神の障害により、行為の判断能力や行動制御能力がない状態を指します。
一方で、「心神耗弱」とは、精神の障害により、行為の判断能力や行動制御能力が著しく減退している状態を指します。
心神喪失と心神耗弱に共通している「精神の障害」には、精神病や知的障害はもちろん、飲酒による酩酊状態や麻薬などを使用した際の錯乱状態も含まれます。
酩酊状態も精神の障害に含まれるのであれば、今回の事例において、Aには完全に責任能力があったとは言えず、器物損壊罪が成立しない又は刑が軽減されるのでしょうか。
【酩酊状態における責任能力の有無】
酩酊状態は、大きく以下の3つに分類されます。
- 単純酩酊:一般的に酔っている状態
- 複雑酩酊:酒乱のような、飲酒をすると人が変わるように攻撃的になる状態
- 病的酩酊:慢性アルコール中毒のような、飲酒量に関係なく、病的な要素で急激な意識障害や幻覚症状が生じる状態
単純酩酊には責任能力が認められ、複雑酩酊には限定責任能力、病的酩酊には責任無能力が認められる傾向になっています。
「酔っ払っていて事件当時の記憶がない」という場合でも、事件当時の言動(足元がふらついていない、犯行後に逃げようとしたなど)によって、基本的に単純酩酊として責任能力が認められることがほとんどです。
今回の事例でも、Aは犯行当時の記憶があまりないと主張していますが、看板を壊した後に逃走していることもあるため、単純酩酊で責任能力があるとして器物損壊罪が成立します。
【酔っ払って刑事事件を起こしてしまったら弁護士へ】
今回の事例でAは逮捕されましたが、数日後に警察から連絡が来て任意の取り調べを要求されることもあります。
酔っ払った状態だったこともあり、事件当時のことをあまり覚えていなくて不安になる方も多くいます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、酔っ払って刑事事件を起こしてしまった方の刑事弁護活動を行った実績がある弁護士が多数在籍しています。
ご自身が酔っ払って刑事事件を起こしてしまったという方や、ご家族が酔っ払って刑事事件を起こして逮捕されてお困りの方は、24時間365日受付中の弊所フリーダイヤル(0120-631-881)までご連絡ください。
東京都内で刑事事件を起こしてしまったという方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部にてご相談を承ります。
【事例解説】置き引きは占有の有無で問われる罪が変わる?窃盗罪と占有離脱物横領罪の違い
【事例解説】置き引きは占有の有無で問われる罪が変わる?窃盗罪と占有離脱物横領罪の違い
置き引きによる刑事事件で窃盗罪が認められた事例をもとに、置き引き行為によって成立する可能性がある窃盗罪と占有離脱物横領罪の違いについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・新宿支部が解説します。
【事例】
東京都新宿区内にある公園のベンチで座っていた男性V(37)は、立ち去る際に手に持っていたバッグをベンチに置いたままにしてしまいました。
公園から200mほど歩いたときにバッグをベンチに忘れたことに気付いたVは、すぐに走って公園に戻りました(公園に引き返すまでの時間は約3分)が、バッグはすでにベンチから無くなっていました。
Vはすぐに警察に通報し、警察は近くにあった監視カメラから、男性A(28)がVのバッグを置き引きしていたことが発覚し、Aを逮捕しました。
警察の取り調べによると、Aは「落とし物を拾っただけで盗んではいない」と容疑を否認しています。
(※この事例はフィクションです。)
【置き引き行為は何罪?】
置き引きは、その場に置かれている荷物を所有者が目を離した隙に盗む行為を指し、刑法第235条で規定されている窃盗罪か刑法第254条で規定されている占有離脱物横領罪(遺失物等横領罪)のいずれかが該当します。
各条文は以下のように規定されています。
- 刑法第235条(窃盗)
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
- 刑法第254条(遺失物等横領)
遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
それぞれの条文が規定している処罰内容は、窃盗罪は「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」、占有離脱物横領罪は「1年以下の懲役又は10万円以下の罰金」なので、どちらの罪が成立するかで全く違ってきます。
【窃盗罪と占有離脱物横領罪の違い】
置き引き行為が窃盗罪と占有離脱物横領罪のどちらに該当するかについては、置かれていた荷物を所有者が占有していたかどうかという「占有の有無」が重要になります。
ここで言う占有とは、バッグや財布などの財物を事実上所持・管理していることを指します。
他人が占有している財物に対して置き引き行為をした場合は、他人の財物を窃取したことになるので窃盗罪が成立します。
一方で、他人が占有していない財物に対して置き引き行為をした場合は、占有を離れた他人の物を横領したことになるので占有離脱物横領罪が成立します。
このように、占有の有無によって成立する犯罪が変わってくるため、占有の有無の判断は極めて重要なポイントになります。
ただ、占有の有無を判断するための明確な基準というものは規定されておらず、判例では、客観的な要件と主観的な要件の2つを総合的に考慮し、社会通念に従って占有の有無を判断しています。
客観的な要件としては、所有者から財物が離れた距離や時間がどのくらいなのかなどを考慮した上で、所有者が財物に対して事実上の支配があったのか判断します。
一方で、主観的な要件としては、所有者が意図的に置いていたり置き忘れていただけといったような、財物を支配する意思があったのか判断します。
【占有の有無が争点になった判例】
窃盗罪か占有離脱物横領罪のどちらに該当するかについて、占有の有無が争点になった判例をいくつか紹介します。
①所有者の占有が認められて、窃盗罪の成立が肯定された判例
・被害者が公園のベンチに置き忘れて引き返すまでの2分間で盗まれたポシェット(最高裁平成16年8月25日決定)
・バス停に並んでいた被害者が置き忘れて約20m離れた隙に盗まれたカメラ(最高裁昭和32年11月8日判決)
②所有者の占有が認められず、占有離脱物横領罪の成立が肯定された判例
・大型ショッピングモールにいた被害者が6階にあるベンチに置き忘れて地下1階から戻る約10分の間に盗まれた札入れ(東京高裁平成3年4月1日)
今回の刑事事件で考えると、Vがバッグを公園のベンチに置き忘れたことに気付いた距離は200mほどで、公園のベンチに引き返すまでの時間は3分ほどだったことから、判例に照らし合わせると、盗まれたバッグ(財物)はV(所有者)の占有が認められるため、Aには窃盗罪が成立することになります。
【窃盗罪・占有離脱物横領罪による刑事事件でお困りの方】
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とした弁護士事務所です。
過去に窃盗罪や占有離脱物横領罪による刑事事件の弁護をした実績がある弁護士も多く在籍していますので、窃盗罪・占有離脱物横領罪による刑事事件でお困りの方は、ぜひ弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
電話で内容を確認した上で、無料の法律相談や初回接見サービスを提供致しますので、まずは24時間365日受付中のフリーダイヤル(0120-631-881)までご連絡ください。
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