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【解決事例】痴漢行為で強制わいせつ罪に

2022-04-24

【解決事例】痴漢行為で強制わいせつ罪に

いわゆる痴漢行為をした結果強制わいせつ罪に問われたという解決事例を踏まえ、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部が解説致します。
【事例】
東京都足立区西新井在住のAさんは、事件当日以前から同じ列車の同じ車両に乗車することが多いVさんに対して痴漢と呼ばれる行為を複数回行っていました。
逮捕当日も、Aさんは臀部(お尻)を撫でる痴漢行為をしていましたが、Vさんが抵抗できないことに乗じてエスカレートしてしまい、最終的に自身の指をVさんの下着の中に手を入れました。
Aさんは同じ車内に乗っていた足立区内を管轄する西新井警察署の警察官に現認され、現行犯逮捕されました。
当事務所の弁護士が依頼を受けた時点で、既にAさんは強制わいせつの罪で勾留されていて、早期の釈放は難しい状況でした。
そこで、弁護士はまず、捜査機関を通じて被害者であるVさんの連絡先を伺い、勾留中のAさんに代わって誠心誠意の謝罪と賠償の意思を示した結果、Vさんは示談に応じてくださいました。
示談成立の時点で既に勾留延長が決まっていましたが、弁護士は示談が成立したことやその内容などを踏まえてもはや勾留が必要ないということを主張した結果、Aさんは釈放されました。
また、刑事処分についても、示談の内容を評価され、不起訴となりました。

≪守秘義務・個人情報保護のため、事件地や一部事件内容を変更しています。≫

【いわゆる痴漢行為について】

列車やバスなどの公共交通機関で他人の臀部(お尻)や太ももなどを触る行為は、俗に痴漢行為と呼ばれています。
痴漢行為に対応する「痴漢罪」などの罪はなく、その多くは各都道府県が定める迷惑防止条例違反として処罰されます。
東京都の場合、公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例に以下の規定があります。

同条例5条1項 何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であつて、次に掲げるものをしてはならない。
1号 公共の場所又は公共の乗物において、衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の身体に触れること。
同条例8条1項 次の各号のいずれかに該当する者は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
 2号 第5条第1項又は第2項の規定に違反した者(次項に該当する者を除く。)

【強制わいせつ罪に当たる場合とは】

今回の事例でAさんが行った行為は、公共の乗り物で衣服の上から、そして下着の中に指を入れることで直接Vさんの身体に触れる行為ですので、前述した東京都の公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例の5条1項1号に当たることは間違いありません。

しかし、Aさんに対しては、強制わいせつ罪が適用されました。
強制わいせつ罪の条文は以下のとおりです。
刑法176条 13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

被害者が13歳以上の場合、強制わいせつ罪は
・暴行又は脅迫を用いること
・わいせつ行為をすること
を要件としています。

暴行又は脅迫という要件について、これは被害者の意思に反してわいせつ行為を行うに足る程度の暴行又は脅迫があれば認められます。
これは一般に想像するような、被害者を押し倒すような暴行や「騒ぐと殺すぞ」等の言葉での脅迫は勿論のこと、路上で背後からいきなり抱き着くような行為でも成立しますし、列車内のような乗客が多数いて恐怖や羞恥のため逃げられず声も上げにくい状況に乗じてわいせつ行為をした場合にも強制わいせつ罪が適用されます。

また、公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例が禁止している行為は被害者を著しく羞恥させたり不安を覚えさせたりする行為ですが、強制わいせつ罪の客体はわいせつ行為です。
条例違反に比べ、より性的羞恥心を害するような行為を指します。
Aさんのように下着の中に指を入れる行為のほか、数分間臀部(お尻)を撫でまわすような行為などがわいせつ行為にあたります。

【痴漢事件・強制わいせつ事件での弁護活動】

列車内での痴漢事件・強制わいせつ事件の場合、在宅で捜査が進められる場合もありますが、被害者が乗る路線・時間帯を知っていることから、在宅で捜査を進めると加害者が被害者に接触して不当な働きかけをすることが疑われると判断され、逮捕・勾留される可能性があります。
特に、同じ被害者に対して痴漢事件・強制わいせつ事件を起こしている場合などでは、逮捕・勾留される可能性が高くなります。
Aさんの場合、逮捕された日より前からVさんに痴漢行為をしていたため、勾留は避けられない事例でした。

また、Aさんは条例違反ではなく強制わいせつ罪で逮捕・勾留されていました。
条例違反の場合は罰金刑がある罪なので略式手続による罰金の可能性がありますが、強制わいせつ罪の場合は罰金刑がない罪なので、起訴された場合には公開の法廷で裁判を受けることになり、実刑の可能性もある罪名でした。
弁護士は、これまでの刑事事件・少年事件の弁護活動の経験を活かし、早期に被害者に連絡して誠心誠意の丁寧な説明を行った結果、起訴される前に示談に応じて頂くことができ、可能な限りの早期の釈放・不起訴獲得という結果に結びつきました。

東京都足立区西新井にて、ご家族が痴漢強制わいせつ事件で逮捕・勾留されてしまった場合、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部にご連絡ください。
刑事事件・少年事件を専門とする弁護士が初回接見に行き、事件の内容や逮捕・勾留中の方の意向を伺った上で依頼者の方にご説明・ご報告致します。

【解決事例】高校生の盗撮事件で不処分

2022-04-21

【解決事例】高校生の盗撮事件で不処分

20歳未満の少年である「高校生」による盗撮事件と、不処分に導いた弁護活動・付添人活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部が解説致します。
【ケース】
東京都中野区在住の高校生であるAさんは、中野区にある施設の異性用トイレにて盗撮行為をしてしまい、中野区を管轄する中野警察署の警察官により逮捕されました。
逮捕後、Aさんは勾留をされたり、家庭裁判所に送致されて少年鑑別所に送致されたりする可能性がありましたが、弁護活動によりすぐに釈放されました。
また、釈放後は少年と保護者の双方としっかりと話をすることで事件の反省と今後の監督について考えるため、繰り返し話し合いの場を設けるとともに、性犯罪の再犯防止のためのカウンセリングを紹介し、通っていただきました。
最終的に、弁護士は上記内容を踏まえてAさんには再犯の恐れがなく家族の監督体制が整っていることを主張した結果、審判でAさんは「不処分」を言い渡されました。

≪守秘義務・個人情報保護のため、事件地や一部事件内容を変更しています。≫

【トイレを盗撮する行為】

トイレでの盗撮行為について、先ずは
①事件を起こした都道府県に記載されている迷惑防止条例に規定がある場合には迷惑防止条例が
②条例に規定がない場合は軽犯罪法が
それぞれ適用されます。
今回は東京都内での事件ですので、①の東京都の定める公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例に違反することになります。

・同条例5条1項 何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であつて、次に掲げるものをしてはならない。
  2号 次のいずれかに掲げる場所又は乗物における人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機その他の機器を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置すること。
  イ 住居、便所、浴場、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所
(略)
・同条例8条2項 次の各号のいずれかに該当する者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
  1号 第5条第1項(第2号に係る部分に限る。)の規定に違反して撮影した者

加えて、盗撮の目的でトイレに入る行為は、建造物侵入罪に当たります。
条文は以下のとおりです。
・刑法130条 正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。

【高校生など少年の弁護活動・付添人活動】

≪少年事件の手続きについては併せてコチラを御覧ください。≫
20歳未満の少年については、原則として少年事件として手続きが進められ、最終的には審判にて保護処分を課すことになります。

保護処分には、「少年院送致」「保護観察処分」「都道府県知事送致(児童相談所や児童自立支援施設への送致)」などが挙げられます。
また、少年に対して保護処分が必要ではないと判断した場合には、「不処分」という判断を下すことができます。

これらの保護処分は、事件の内容だけでなく少年の性格や保護者による監督体制などを総合的に考慮して判断されます。
弁護士としては、審判迄の期間、少年に対して事件の振り返りを促すことは勿論のこと、時として保護者に対して助言や指導をする必要もあります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部は刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
当事務所では、これまで高校生を含む多くの少年事件に携わってきました。
東京都中野区にて高校生のお子さんが盗撮などの事件で逮捕され、不処分を目指す弁護活動・付添人活動について知りたいという方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部に御連絡ください。

【解決事例】住居侵入・不正アクセス禁止法違反事件と未決勾留期間

2022-04-18

【解決事例】住居侵入・不正アクセス禁止法違反事件と未決勾留期間

住居侵入罪・不正アクセス禁止法違反で逮捕・勾留された場合の罪と、未決勾留期間について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部が解説致します。
【ケース】
東京都文京区在住のAさんは、男女の関係にあった被害者Vさんが別の相手とも関係を築いていたことに憎悪の念を抱き、Vさんの周辺情報を嗅ぎ付けようと合鍵を用いて無断でVさんの家に侵入したり、勝手にVさんのメールにアクセスするなどしました。
Vさんからの被害届を受理した文京区を管轄する富坂警察署の警察官は、Aさんを住居侵入罪で逮捕し、その後、不正アクセス禁止法違反でも逮捕しました。

Aさんの事件は一審・控訴審と担当し、実刑判決は免れませんでしたが、一審判決時は未決勾留期間40日が、控訴審判決では未決勾留期間30日が、それぞれ算入されました。

≪守秘義務・個人情報保護の観点から、事件地や一部事件内容を変更しています。≫

【住居侵入罪・不正アクセス禁止法違反】

御案内のとおり、他人の家や敷地に正当な理由なく侵入する行為は、住居侵入の罪にあたります。
(住居侵入)
刑法130条 正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。

次に、Aさんが行ったVさんのメールに無断でアクセスする行為は、不正アクセス行為の禁止等に関する法律(通称:不正アクセス禁止法)に違反します。
(不正アクセス行為の禁止)
同法3条 何人も、不正アクセス行為をしてはならない。
同法11条 第3条の規定に違反した者は、3年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。

一般論で言うと、関係性が近い人同士でパソコンなどをシェアしたことがある、あるいはスマホを一時的に貸したことがある場合等、一度アクセスしたことがある電子端末ではパスワード等が保存されている場合があります。
このように、違法なウイルスや専門知識を使ったわけではなく、勝手にログインできたなどという場合であっても、無断でログインをする行為は不正アクセス禁止法のいう「不正アクセス」に該当し、処罰対象となります。

【未決勾留期間】

≪刑事事件の手続きについて、詳細はコチラを併せてご確認ください。≫

罪を犯したと疑われる被疑者・被告人は、証拠隠滅や逃亡のおそれがあると判断された場合には裁判で判決を受ける前であっても勾留されることがあります。
この期間を、裁判での判決は未だだが勾留する期間として、未決勾留期間と呼びます。
このうち、起訴されてから判決を受けるまでの期間の勾留期間については、刑期に算入される場合があります。

起訴された被告人にとって、保釈により在宅で裁判を受けることが望ましいと言えます。
しかし、証拠隠滅や逃亡のおそれがあると判断された場合、なかなか保釈が認められません。
起訴後も長期間身柄拘束された被告人が、裁判で実刑判決を受けた場合、どれだけの期間が刑に算入されるか、という点は極めて重要と言えます。

また、控訴審での未決勾留期間についても、刑に算入される場合があります。
一審で実刑を言い渡され、控訴審でも覆る見込みが薄い場合は控訴しない方が短期間で刑期を終えられるという見方もあります。
しかし、勾留中は刑務作業が科せられませんが、懲役刑の場合は刑務作業が必須となるため、未決勾留期間の算入により被告人(のちの受刑者)にとっての負担が軽くなるという側面があります。

東京都文京区にて、住居侵入罪や不正アクセス禁止法違反で家族が逮捕され、未決勾留期間について知りたいという方がおられましたら、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部に御連絡ください。

【解決事例】同僚に対するセクハラ・わいせつ事案

2022-04-15

【解決事例】同僚に対するセクハラ・わいせつ事案

~事案~
ある日,Bさんは仕事を終えて帰宅するとき,男女兼用の更衣室で,同じく同僚であるYさんを見かけ,声を掛けました。
かねてよりYさんに対して好意を抱いていたBさんは,会話の中で,会社内の男性社員たちが口をそろえて「Yさんが可愛い」と話していたことをYさん自身に話したところ,「信じないよ」と,素っ気なく言われてしまいました。
そこでBさんは,唐突にYさんに抱き着き,10秒程度抱きしめた後,「本当だよ,信じたかな」と言うと,Yさんは「怒られるよ」と言い残し,その場から立ち去ってしまいました。
数日後,Bさんは,Yさんが雇った弁護士から「セクハラを受けた」と,訴えられてしまいました。

※守秘義務の関係で一部事実と異なる記載をしています。

~本件で成立する可能性がある犯罪~

強制わいせつ
⇒13歳以上の者に対し,暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は,6年以上10年以下の懲役に処する。
13歳未満の者に対し,わいせつな行為をした者も,同様とする。
(刑法第176条)

・暴行罪
 暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは,2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
 (刑法第208条)

・各都道府県の迷惑行為防止条例違反
⇒何人も,正当な理由なく,人を著しく羞恥させ,又は人に不安を覚えさせるような行為であって,次に掲げるものをしてはならない。
⑴ 公共の場所又は公共の乗物において,衣服その他の身に着ける物の上から
又は直接人の身体に触れること。
(参考:東京都公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例)
⇒罰則 6月以下の懲役又は50万円以下の罰金
※なお,各地方自治体によって,条例名が異なります。

~Bさんは罪に問われるのか~

Bさんは,Yさん雇った弁護士から自身が訴えられていることを知り,警察に被害届を出されたり,逮捕されたりしないよう,穏便に事態が収束することを希望していました。
現在では刑法が改正されたことによって強制わいせつ罪も非親告罪となり,被害者が告訴をしていなくとも警察などの捜査機関が事件として取り扱えるようになりました。そのため,強制わいせつ事件においては,早い段階で被害者の方との間で示談を取りまとめたり,被害届は出さないという形でまとめたりして,解決できるかどうか重要となります。
仮に,当人同士の口約束で,「被害届けなどは出さない」という形で,その場は収まったとしても,今後,さらなるトラブルに発展することや,事件を蒸し返されてしまうというおそれもあります。示談や合意を取りまとめる際には,法律上有効な文言となっているかどうか,弁護士の目を通しておく必要があります。
また,暴行罪や迷惑行為防止条例違反についても非親告罪であり,警察などの捜査機関が事件として認知すれば,捜査が行われ,Bさん自身が罪を犯したと認められれば,検察庁に事件が送致され,検察官の判断により起訴されてしまえば前科が付く可能性が高くなります。

 

~セクハラとわいせつ行為~

今回のBさんの行動は,突然,同僚女性に抱き着いたという行為をセクハラとして訴えられてしまいました。
今回の抱きつくと言った行為がBさんにとって,性欲を刺激・興奮させ又は満足させるという性的意向の下で行われ,また,自身の体を押し付けたと判断されれば,強制わいせつ罪として扱われることになります。
また,同意なくYさんに抱き着くという行為は,その場所によっては「痴漢」と同様の迷惑行為防止条例違反として扱われるケースもあります。
さらに,Bさんが性的な意図を持たず,また,現場において公共性が認められなかったとしても,抱きつくという行為がYさんに対し,心理的な苦痛を与えたとして暴行罪が適用される可能性もあります。
いずれの犯罪においても,被害者の精神的,身体的な苦痛が大きく,立件された際には重い処分が科されることが予想されますし,顔見知り同士での事件ということになると,逮捕されてしまうリスクも高まります。
「単にセクハラで社内の問題にすぎない」と悠長に捉えてしまい,後々になって取り返しのつかない事態になっていた,ということもあります。
そのため,いち早く,今回のケースが,どのような法令に違反するのかを見極め,適切に対処していくことが重要であるといえます。

~本件事例における当事務所の活動~

Bさんご本人からの依頼を受け,当事務所の弁護士がいち早く,Yさんの弁護士とコンタクトを取りました。
そこで,Yさん方の意向を確認するとともに,本件行為がいずれの犯罪行為に当たるのかの協議を重ねました。
その一方で,Bさんとの面談も重ね,事の重大性を認識してもらうとともに,今までの自身の行動を見つめ直す機会にすることも出来ました。
Yさん方の弁護士と協議を重ねるなかで,Bさんが所謂「ノリ」で行ったこと,現在は自身の行為を深く反省していることを説明し,また,今回の行為は決して悪意の下になされたものではなく,性的意図は無かったことを粘り強く説明しました。
粘り強く説明を重ねることで,Yさんの憤りや恐怖心を取り除くこともでき,スムーズに示談交渉へと移ることが出来,結果として,Bさんが刑事告訴されることなく,Yさんと示談を成立させて解決するに至りました。
後になって事件を蒸し返されることも無いように,示談書の条件面については弁護士が法的な観点で確認をしていますので,Bさんは,事件後も安心して元の生活に戻ることができました。

性犯罪とされる事件においては,「その行為がどういった犯罪に該当するのかを見極める,加害者が自身の行為を反省し,二度と同じ過ちを繰り返さないこと,被害者の不安や恐怖,憤りを軽減すること」という点が重要です。
時代の流れにより,一昔前は黙認されていた行為も,現在ではセクハラ(セクシャル・ハラスメント)やパワハラ(パワー・ハラスメント)として訴えられてしまうことがあります。
また,行為によっては事件化され,最悪の場合,逮捕されてしまうことにもなりかねません。
ご自身や大切なご家族が,何らかの罪に問われてしまった場合,出来るだけ早く弁護士に相談することをお勧めします。

いち早く弁護士に相談することにより,処分の見通しや今後の手続きの流れについて早い段階で聞くことができ,その後の手続きに落ち着いて対応することができます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士は日頃より強制わいせつ事件などの刑事事件のみを受任し,数多く扱ってきた実績がございますので,どのような事件に関しても安心してご相談頂けます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では初回無料法律相談も行っておりますので,お困りの方は,0120-631-881までお気軽にお電話ください。

【解決事例】大麻所持再犯で執行猶予判決

2022-04-12

【解決事例】大麻所持再犯で執行猶予判決

大麻所持事件で過去に有罪判決を受けた方が、再犯で逮捕されたものの執行猶予判決を受けたという事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部が解説致します。

【事例】
東京都新宿区西早稲田在住のAさんは、10年近く前に大麻取締法違反で執行猶予付きの有罪判決を受けたことがありました。
しかし、事件当日、新宿区西早稲田を管轄する警視庁戸塚警察署の警察官による職務質問を受け、Aさんの大麻所持が発覚してしまい、Aさんは大麻取締法違反で現行犯逮捕されました。

≪守秘義務・個人情報保護の観点から、事件地や一部事件内容を変更しています。≫

【大麻所持の罰条】

我が国では、大麻取扱者を除き大麻を所持することが禁止されています。
大麻を所持していた場合には大麻取締法違反にあたり、
・他人に売るなどして営利を目的としていた場合には「7年以下の懲役/7年以下の懲役及び200万円以下の罰金
・上記以外の場合で、自分で使用することを目的としていた場合などには「5年以下の懲役
に処せられます。(大麻取締法24条の2第1項、同第2項)

【大麻所持事件での弁護活動】

大麻所持事件の場合、大麻を所持している認識があったのか、なかったのかにより、弁護活動が異なります。
今回のAさんの場合は、職務質問とその際の所持品検査で大麻が出てきていて、Aさん自身も所持を認めていたため、事案に争いはありませんでした。
大麻所持事件の場合は量が少なく認めていた場合には執行猶予付有罪判決を受ける場合が少なくありません。
しかし、Aさんの場合、過去に同種事案での前科があり、有罪判決を受けて10年未満での犯行でしたので、厳しい刑事処罰を受ける可能性が否定できませんでした。

~接見禁止の一部解除~
Aさんは勾留された際、家族であっても面会ができない「接見禁止決定」が下されていました。
しかし、Aさんが更生する為には家族の協力が不可欠であり、将来を見据えた話し合いをする必要があることから、弁護人はすぐに接見禁止の一部解除を申立て、証拠隠滅などを手助けする恐れがない家族については、面会が出来るよう求めました。
接見禁止の一部解除はすぐに発動され、依頼を受けた2日後に家族はAさんの面会が許されました。

~保釈請求~
刑事訴訟法上、前科の有無がすぐに刑事手続きに影響を及ぼすわけではありません。
しかし、前科があって今回の事件で実刑判決を受ける恐れがある事件では、実刑判決による収監を恐れて逃亡する恐れが否定できないなどの理由で保釈に慎重になる可能性がありました。
弁護人は、予め家族と打合せをして、Aさんが逃亡する意思がないことを確認するとともに、監督する者としてAさんが逃亡できないような環境づくりに協力して頂きました。
そして、Aさんが起訴された当日に保釈請求書を裁判所に提出し、裁判官に対して書類・口頭でAさんの逃亡のおそれがないことや証拠隠滅の意思がないことを主張した結果、起訴された次の日には保釈が許可され、即日保釈金を納付しAさんは手続き上最速で拘束を解かれることとなりました。

~刑事裁判~
保釈が認められた場合でも、Aさんは裁判を受けることに変わりありません。
弁護人は、保釈された直後のAさんに、薬物依存症のおそれがあるとして専門家による診断・受診の必要性を説明し、専門の治療施設を紹介しました。
Aさんの保釈後の決意と行動、家族のサポート体制などを踏まえ、弁護人はAさんが反省していて二度とこのような事件を起こさないよう努力している状況について被告人質問や情状証人で証言してもらい、その内容を弁論で主張した結果、Aさんは執行猶予付きの判決を受けることに成功しました。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部は、これまでに大麻所持などの薬物事件を多数経験してきました。
特に再犯事件の場合、実刑になる恐れがあるだけでなく、社会復帰後も見据えて薬物依存症と向き合うなどの対策は必要不可欠です。
薬物の再犯事件では、薬物事件の弁護経験が豊富な弁護士に弁護活動を依頼することをお勧めします。

東京都新宿区西早稲田にて、過去に大麻所持で有罪判決を受けた方が再犯事件で逮捕されてしまい、執行猶予判決を獲得できるか知りたいという場合、すぐに弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部に御連絡ください。

【解決事例】少年らによる暴走行為(共同危険行為)

2022-04-06

【解決事例】少年らによる暴走行為(共同危険行為)

~事案~
Aさんは大学に通う19歳の男性で,ある日同級生ら6人と遊んでいました。
すると,そのうちの1人が「バイクに乗ってパトカーと鬼ごっこをしよう,どうせ捕まらないよ」と言い出したところ,みんなそれに賛成し,それぞれがバイクに乗り,出発しました。
Aさん自身は運転が得意でなく,乗り気ではなかったのですが,友人らの楽しそうな空気を壊したくないと思い,注意することもできず,同級生の運転するバイクの後部座席に乗り,集団の最後尾を走ることになりました。
しばらくすると,後方からパトカーがサイレンを鳴らしてきましたが,Aさんたちは,約2.4キロメートルにわたり,パトカーの前を低速で蛇行しながら進行し,信号無視などの違反を繰返しました。
パトカーの追跡を振り切ったところで,その日は解散したものの,後日,逮捕されてしまいました。

※守秘義務の関係で一部事実と異なる記載をしています。

~本件で成立する犯罪~

暴走行為(共同危険行為等)の法定刑
暴走行為(共同危険行為)をした場合
⇒2年以下の懲役または50万円以下の罰金(道路交通法第68条 117条の3)

・違法改造車を運転した場合
⇒3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金(道路交通法第119条)

また,本禁止規定は,暴走族の取締りを主目的として,制定され,2004年の道路交通法の改定により,被害者がいなくても共同危険行為等を処罰できるようになりました。

~暴走行為とは~

自動車やバイク,原動機付自転車で暴走行為を行った場合,共同危険行為等の禁止違反として,道路交通法違反として検挙されることとなります。
具体的な暴走行為としては
1 広がり通行
  車線(車道)いっぱいに広がり走行する行為
2 信号無視
  赤信号を無視して走行する行為
3 蛇行運転
  道路を左右に蛇行しながら走行する行為
4 交互追い越し
  複数の組に分かれ,それぞれ交互に追い越しをしながら走行する行為
5 巻き込み通行
  自身らと無関係の一般車両を集団内に巻き込み,一般車両の自由を拘束し
 て走行する行為
6 一定区間の周回
  道路上において,ある一定区間を周回する,急発進や急停止等を行い他の車
両の通行を遮断する行為
7 渋滞時等の渦巻き
  渋滞などにより停止した車両の後方でぐるぐると旋回する行為
が挙げられます。
 また,自分は運転せず同乗していたという場合でも,「一緒に暴走行為をしていた」と評価されれば「共犯」として処罰の対象となることがあります。

~Aさんは罪に問われるのか~

同乗者であったAさんも警察に逮捕され取調べを受け,家庭裁判所へ事件送致されることとなりました。
事前に暴走行為を行うことを話合い,もしくは,その場の雰囲気で意気投合して車やバイクに同乗し,暴走行為を繰り返した事から,共同危険行為違反として逮捕されてしまったのです。
共同危険行為は,他の運転者や歩行者を巻き込んだ重大な事故を起こしかねないものですから,警察も悪質な事案として扱うことがあります。
その場のノリや,友達の前で見栄を張って,といった軽い気持ちでこのような暴走行為をしてしまう少年がいますが,警察や家庭裁判所も,厳しい姿勢で臨むことが予想されます。

~18歳,19歳の少年の場合の注意点~

2022年4月1日から施行されている少年法では,18歳,19歳の方は「特定少年」として扱われます。
特定少年」の事件の場合には,他の少年事件と比べて,「逆送決定」といって,少年事件の枠の中でおさまらず,20歳以上の成人の刑事事件として扱われる可能性が高くなります。
成人の刑事事件の中で扱われてしまうと,罰金刑や懲役刑を受ける可能性が出てきて,前科がついてしまうリスクが生じることになります。
特定少年の事件の場合には,いかに「少年事件の枠内」で納めることができるかどうかが重要になってくるでしょう。

~本件事例における当事務所の活動~

ご家族からのご依頼を受け,当事務所の弁護士がいち早く警察署に留置されている少年Aさんと接見しました。
Aさんは警察に逮捕されるというのが初めてのことであり,どのように対応したらよいか,また家族がどう思っているのかについて非常に不安に感じている様子でした。弁護士がAさんと何度も接見し,対話を重ねることでAさんの不安を取り除くとともに,二度と同じ事件を起こしてしまわないために,普段のAさんの生活や,性格,アルバイト中のAの働きぶりなどの情報を集めました。
Aさんは逮捕されて一連の取調べを受けた後,少年鑑別所に移されることになりました。少年鑑別所の中でも問題を起こしてしまうことなくまじめに生活し,だされた課題に対しては熱心に取り組みました。
鑑別所でも弁護士と何度も面会を重ね,自分がしてしまった事の重大性や,周囲の人に対してどれだけの迷惑を掛けてきたのかについて気付くことができました。
本件の以前も,Aさんは何度か警察に補導されたこともありましたが,今回の事件を受けて,家族がどれだけ自分を大切にしていたかということに気付くことができました。
本件は,Aさんの周囲の生活環境や家族仲には大きな問題がなく,非行を繰り返す状況にないこと,暴走行為の中でAさんの役割,立場が上位にはなかったこと,過去の処分の傾向からも重い処分を科す必要はないこと等を粘り強く主張したところ保護観察処分となり,Aは日常生活に復帰することが出来ました。
少年事件においては,「どうして事件を起こしてしまったのか,二度と同じ事件を起こさないためにはどうしたらよいか」という点が重要です。
今回のケースに限らず,ご自身や大切なご家族が,何らかの罪に問われてしまった場合,出来るだけ早く弁護士に相談することをお勧めします。

いち早く弁護士に相談することにより,処分の見通しや今後の手続きの流れについて早い段階で聞くことができ,その後の手続きに落ち着いて対応することができます。
また,取調べの対応方法や供述内容に対するアドバイスを受けることで,誤解を招くような供述を避けることが出来ます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部の弁護士は日頃より刑事事件のみを受任し,数多く扱ってきた実績がございますので,交通事件に関しても安心してご相談頂けます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部では初回無料法律相談も行っておりますので,お困りの方は,0120-631-881までお気軽にお電話ください。

海賊版の販売で著作権法違反

2022-03-30

海賊版の販売で著作権法違反

著作者の許可を得ていない動画や画像、音楽などを収録するいわゆる海賊版の売却で問題となる罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部が解説致します。
【ケース】
東京都大田区在住のAは、大田区内の会社に勤める会社員です。
Aはとある音楽グループを応援していてそのブルーレイディスクや写真集などを数多く持っていましたが、そのデータを複製(コピー)し、インターネットオークションサイトやフリーマーケットサイトでそれを売却していました。
ある日、Aは別の刑事事件を起こして大田区を管轄する田園調布警察署の警察官に任意同行とスマートフォンを任意で提出するよう求められ、自身のスマートフォンを提出しました。
Aはその後すぐに刑事事件専門の弁護士に相談し、海賊版で問題となる罪と、事件の捜査中に全く別の事件が発覚する可能性について質問しました。

≪ケースは全てフィクションです。≫

【海賊版の販売】

著作権法では、小説・音楽・映画などを著作物として、著作物を創作した者を著作者と定義しています。(著作権法2条1項2号ほか)
日本国民が作成した著作物や最初に日本国内で発行された著作物などについて、その著作物の著作者には「著作権」が認められています。

著作権の具体的な権利は著作権法第三款の「著作権に含まれる権利の種類」に規定されていますが、今回のケースで想定した海賊版の販売行為は、特に「複製権」と「頒布権」が問題となると考えられます。(同21条、26条各項)
つまり、著作物である映像を光学ディスク(CD・DVD・ブルーレイディスク)などにコピー(保存や印刷)したり、写真集などの画像をコピーして他人に渡したり売ったりする行為は、著作者にのみ認められているため、海賊版のように無断で作成し販売する行為は著作権(の一部である複製権や頒布権)を侵害する、ということになります。
著作権を侵害した場合、10年以下/1000万円以下の罰金のいずれか、若しくはその両方に処されます。(著作権法119条1項)
なお、著作権侵害については親告罪とされているため、著作権者の刑事告訴なしには被疑者を起訴することができません。(著作権法123条1項)

【別の事件がきっかけで事件が発覚】

ケースのAの場合、著作権法違反で直接捜査を受けたというわけではありません。
しかし、別の事件で捜査を受ける過程でスマートフォンの情報を確認されていることから、海賊版の販売行為についても捜査機関に認識される可能性が高いと言えます。。
このように、別の事件で行われた捜査の過程で事件が発覚してしまい、結果として捜査を受けることになるというケースは少なからずあります。
家宅捜索のような強制捜査による発覚が分かりやすいですが、近年はスマートフォンで情報をやりとりする場合が多く、スマートフォンを押収・任意提出することで
・児童買春のやり取りが発覚した
・児童ポルノに該当する動画や画像を所持していることが発覚した
・大麻や覚醒剤などの薬物を売買するやり取りが発覚した
等の事例が実際にありました。

捜査機関が所有者の意に反してスマートフォンの情報を閲覧した等の捜査・手続きに問題がある場合を除き、別の事件で捜査を受ける過程で発覚した別の事件についても捜査を行うことは可能です。

【海賊版の販売での捜査】

前述のとおり、著作権の侵害は親告罪ですので、捜査機関は刑事告訴を受けて初めて捜査を開始する場合が多いと考えられます。
しかし、以下の記事で見て取れるように、捜査機関が刑事告訴を受ける前に積極的に捜査等を開始するケースもあります。

「警察が去年12月、サイバーパトロールをしていたところ、「海外正規品」と記された「鬼滅の刃」のDVDが、正規品の6分の1以下の価格で売られているのを見つけ、製作会社に確認したところ、海賊版だと判明したということです。」
(ABCニュース2021/12/14(火) 19:18配信(抜粋)、2022/3/25㈮閲覧)

また、ケースのAが「正規品」と書いたり「○○で購入した」などとあたかも正規品と誤信させるような標記をして海賊版を販売した場合、購入した相手に対する詐欺罪が成立します。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部は刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
東京都大田区にて、いわゆる海賊版を販売して嫌疑をかけられ著作権法違反で捜査を受けている方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部にご相談ください。
在宅事件の場合、事務所にて無料で相談を受けることができます。
≪御相談はこちらから。≫

【準強制わいせつ】強制わいせつ致傷で逮捕

2022-03-25

【準強制わいせつ】強制わいせつ致傷で逮捕

準強制わいせつ、及び強制わいせつ致傷事件で問題となる罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部が解説致します。

事例

東京都中央区築地在住のAは、中央区内で自営業をしています。
事件当日、Aは中央区内で泥酔状態であったVをナンパし、半ば強引に公園に誘導しました。
Aはその公園のベンチで乗りかかってわいせつな行為をしようとしましたが、Vから「やめて」などと言われたことから、わいせつ行為をする意思を喪失しました。
Aは本件の発覚をおそれ逃走しようとした際、Vを払いのけ怪我を負わせた。
東京都中央区を管轄する築地警察署の警察官は、Aを強制わいせつ致傷の疑いで逮捕しました。
Aの家族は、刑事事件に強いと評判の弁護士に弁護を依頼しました。
(本件は事実をもとにしたフィクションです。)

~「準強制わいせつ未遂」から「強制わいせつ致傷」~

刑法178条は、準強制わいせつ罪および準強制性交等罪(旧:強姦罪)について定めています。
「準」強制とはあまり聞き慣れない犯罪かも知れませんが、下記のとおり重大な刑事事件ともなり得ることから決して軽視できない犯罪です。

準強制わいせつ及び準強制性交等)
第178条 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした者は、第176条の例(注:6月以上10年以下の懲役)による。
2 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、性交等をした者は、前条の例(注:5年以上の有期懲役)による。

強制わいせつ罪や強制性交等罪(旧:強姦罪)は、手段として「暴行」又は「脅迫」を用いる犯罪です。
これに対し、準強制わいせつ罪および準強制性交等罪(旧:強姦罪)は、「心神喪失」や「抗拒不能」を手段とする点において上記犯罪と異なります。
特に、問題になりやすい「抗拒不能」の要件に関しては、心理的・物理的に抵抗できない状態をいうと解されています。
本件では、AはVが泥酔状態であることを利用してわいせつ行為に及ぼうとしていますから、Vの「抗拒不能」要件は満たすことが通常でしょう。
そしてAはわいせつ行為をしようとしていますが、これを遂げていないため、Aの行為は未遂(刑法180条・178条1項)にとどまるものです。
もっとも、Aはその後の逃走過程において、Vに怪我を負わせるに至っています。
この場合、Aには準強制わいせつ未遂罪ではなく「強制わいせつ致傷罪」が成立する可能性があることに注意する必要があります。

(強制わいせつ等致死傷)
第181条 第176条、第178条第1項若しくは第179条第1項の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって人を死傷させた者は、無期又は3年以上の懲役に処する。
2 (略)

上述のようにAは、「第178条第1項……の罪の未遂罪を犯し」ています。
そして、AはVに怪我を負わせているのですから「傷」害を負わせたということになれば、強制わいせつ致傷罪が成立することになります。
この場合、法定刑は「無期又は3年以上の懲役」と一気に重くなってしまうのです。
この点に関して、いかなる場合に致傷行為が成立するかについて判断した判例(最決平成20年1月22日)は、「逃走するため被害者に暴行を加えて傷害を負わせた場合」も本罪の対象となる旨判示しています。
したがって、本件においても、逃走過程でVに怪我を負わせていることから、強制わいせつ致傷罪が成立する可能性が高いといえます。

~強制わいせつ致傷事件における弁護活動~

仮に逮捕(あるいは勾留)段階では、準強制わいせつ(未遂)として捜査されていても、被害者に怪我を負わせたことが後に判明するなどして強制わいせつ致傷事件として起訴されてしまうことも考えられます。
強制わいせつ致傷罪は上記条文のとおり、法定刑として「無期」の懲役も含まれています。
そして、裁判員法2条1項1号は「死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる罪に係る事件」を裁判員裁判対象事件としています。
すなわち、同罪で起訴されるということは、原則として裁判員裁判の対象になるということに他なりません。
裁判員裁判では、集中審理が行われるなど起訴された被告人にとって大きな負担を伴います。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部は、準強制わいせつ強制わいせつ致傷事件を含む刑事事件を専門的に扱っている法律事務所です。
弊所には性犯罪に関する示談対応などの弁護活動の経験が豊富な刑事弁護士が多数所属しています。
東京都中央区築地にて、強制わいせつ致傷事件で逮捕された方のご家族は、24時間/365日対応のフリーダイヤル(0120-631-881)までまずはお電話ください。

服の上からの撮影行為に盗撮罪は成立する?逆転有罪判決も

2022-03-20

服の上からの撮影行為に盗撮罪は成立する?逆転有罪判決も

スカートの中や着替え、トイレなどではなく「服の上から撮影」する方法での盗撮事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部が解説致します。

事例

東京都中央区在住のTさんは都内の専門学校に通う20歳の男性です。
ある日,TさんはO線の電車に乗って通学していたとき,たまたま好みの顔の女性を見かけて,声を掛けようと思ったものの勇気が出なかったため,姿だけでも写真に撮りたいと思い,女性の全身が写るようにスマートフォンのカメラで撮影しました。するとその様子に気付いた他の乗客に「盗撮していただろ」と問い詰められ,最寄りの駅で電車を下ろされて,駅事務室に連れていかれてしまいました。
Tさんは、通報を受けて臨場した中央区を管轄する月島警察署の警察官により取調べを受けました。

【服の上からでも盗撮罪になるのか?】

盗撮に関する犯罪は,各都道府県で制定されている「迷惑行為防止条例」に規定があります。都道府県によっては「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」というように,長い名前が付いていることもあります。
東京都の例で言うと,盗撮に関する条例の規定は次のようになっています。

第5条 何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であつて、次に掲げるものをしてはならない。
・・・(中略)
(2) 次のいずれかに掲げる場所又は乗物における人の通常衣服で隠されている下着又は身体 を、写真機その他の機器を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置すること。
イ 住居、便所、浴場、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいる ような場所
ロ 公共の場所、公共の乗物、学校、事務所、タクシーその他不特定又は多数の者が利用 し、又は出入りする場所又は乗物(イに該当するものを除く。)
(3) 前2号に掲げるもののほか、人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、卑わいな言動をすること。

条例が明文で禁止しているのは,
通常服で隠されている下着や身体

を撮影したり,撮影する目的でレンズを向けたりするという行為です。
そのため,「服の上から人の身体や顔を撮影する行為」は盗撮に当たらないため,条例には反していないようにも見えます。
しかしながら,最近,服の上から身体を撮影した行為に対しても条例違反を認める裁判例が出されました。
しかも,この裁判は「逆転有罪判決」,つまり,一審では無罪,条例違反は成立しないと判断したのを覆して,条例違反が成立する,つまり「卑わいな言動」に該当すると判断し直したというものです。
≪参考≫
着衣の上からでも盗撮、逆転有罪 東京高裁「下品でみだらな言動」 共同通信令和4年1月13日配信
小型カメラで女性の衣服の上から胸元などを隠し撮りしたとして、東京都迷惑防止条例違反の罪に問われた男(51)の控訴審判決で、東京高裁が無罪とした一審判決を破棄し、懲役8月(求刑懲役10月)の有罪判決を言い渡したことが13日、分かった。
これは,服の上から身体を撮影した行為が,「卑わいな言動」にあたると判断したというものです。
実際,過去にも服の上から身体を撮影した行為に対して盗撮の成立を認めた裁判例もありました。

【過去の裁判例】

平成19年9月25日に札幌高等裁判所で言い渡された判決です。
この事件でも,一審では,服の上から身体を撮影した行為に対して盗撮は成立しないと判断していましたが,高等裁判所がその判断を覆し,盗撮が成立するとして逆転有罪判決を言い渡したものです。その後弁護側も上告していますが,上告は棄却されたため高等裁判所判決が確定しています。
この事例では,ショッピングセンター内で被害者の後ろを,距離にして約40メートル,時間にして約5分間の間,付け狙い,お尻や腰のあたりの身体のラインがくっきり見える部分を11回撮影したというものでした。
札幌高等裁判所は,このような行為が,被害者に対して「そんなことをされたら恥ずかしいし気味が悪い」という気持ちを生じさせるものであるため「卑わいな言動」に該当すると判断し,有罪の判決を言い渡しました。
重要になるポイントは,服の上から身体を撮影したという場合であったとしても,①体のどのあたりを撮影したのか,②どのような体勢で撮影行為をしたのか,と言った点から,その撮影行為を傍から見た時に被害者が羞恥心や不安な感情を感じるかどうかです。

【Tさんの事例ではどうなのか?】

Tさんの事例だと,電車内でこっそりと相手に知られないように全身を撮影したという行為です。これだけでは判断できませんが,全身を写したというだけでは「卑わいな言動」には当たらない可能性があります。しかし,Tさんと女性との位置関係や,カメラの向け方,実際に撮った画角等によっては,相手の女性に不安を感じさせるような言動であるとして,「卑わいな言動」と判断されて逮捕されたり,起訴されたりしてしまう可能性があります。
服の上からの撮影行為であっても,迷惑行為防止条例違反として警察に被害届が出されたり,取調べを受けたりといったトラブルに派生する可能性が十分にあります。
特に,最新の高等裁判所の判断としては「有罪」と判断された事例もあります。
東京都中央区にて、盗撮などの迷惑行為防止条例に関して不安なことがある方は,刑事事件に特化した弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部にご相談ください。

新宿区の電動キックボードで人身事故,逮捕される?

2022-03-15

新宿区の電動キックボードで人身事故,逮捕される?

電動キックボード人身事故を起こした場合の問題点について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部が解説します。
事例
新宿区内の会社に勤めているYさん(20歳代・男性)は,最近通勤のために電動キックボードを使い始めました。
ある日の通勤途中,Yさんは電動キックボードを運転していた際,スマートフォンの通知が鳴ったので脇見をしたところ,歩行者と接触して相手を転倒させてしまいました。
怖くなったYさんはその場から逃げてしまいましたが,しばらくたって自分が逮捕されるのではないかと不安になってきました。
≪事例は全てフィクションです。≫

・電動キックボードは「車両」になる?

2022年3月4日の報道によると,道路交通法の改正案が閣議決定されたということです。
まだ正式に国会で決まったわけではありませんが,閣議決定された内容によると,電動キックボードについては「特定小型原動機付自転車」と呼ばれることになり,扱いとしては「速度制限のある自転車」といった形になりそうです。
現在の道路交通法では,(電動)自転車も原動機付自転車(一般的に,原付バイクと呼ばれているもの)も,「車両」として扱われて様々な規制を受けてますから,今後電動キックボードについても道路交通法に従った運転が求められます。

・電動キックボードでの事故はどうなる?

Yさんの事例のように,電動キックボードでの人身事故は,今後どんな犯罪になるのでしょうか。
・・過失運転致傷罪になる?
一つ考えられるのは,過失運転致傷罪になる可能性があります。
現在,自動車やバイクの人身事故については,「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」によって犯罪になります。この法律では,「運転上必要な注意を怠り,人を死傷させた」場合,つまり過失(:わきみ,よそ見,居眠りと言った不注意)によって人身事故を起こした場合には,この法律によって処罰されることになります。
単純な過失運転致傷罪であれば7年以下の懲役又は禁錮若しくは100万円以下の罰金が科せられることになります。
今後,法改正によって,電動キックボードについても,自動車や(原付)バイクと同じように扱うべきだということになれば,同じように人身事故について過失運転致傷罪が適用されることになる可能性があります。
この点については今後の法改正次第になります。
・・過失致傷罪になる可能性大!
法改正があるまでは,(重)過失致傷罪として扱われることになるでしょう。
過失致傷罪の場合には50万円の罰金,より重大な不注意の場合には5年以下の懲役又は禁錮若しくは100万円以下の罰金が科せられます。
現在の法律でも,自転車の運転中に起きた人身事故については過失致傷罪や重過失致傷罪として扱われています。電動キックボードでの人身事故についても,当面は自転車と同じように扱われるでしょう。
・・ひき逃げになることもある
現時点ではまだ,電動キックボードは「車両等」という扱いはされていませんが,改正された道路交通法の内容によっては,「特定小型原動機付自転車」も「車両等」に含まれることになる可能性があります。
「車両等」に含まれると,電動キックボードの運転中に事故を起こしてしまった場合には,自動車やバイクの事故と同様に,報告義務や救護義務が課せられます。
人身事故であれ物損事故であれ,事故を起こしてしまった場合には最寄りの警察官へ通報する義務がありますし,警察官が現場に到着するまではその場で待っていなければいけません。事故によって怪我をした人がいる場合には,救護をしなければなりません。
これらの報告義務や救護義務を怠ってその場から立ち去ってしまうと,「ひき逃げ」や「当て逃げ」として扱われることになります。

・電動キックボードのひき逃げ事故で逮捕される?

法整備がなされて,電動キックボードが自動車やバイクと同様の車両として扱われるようになると,今後ひき逃げ事故として扱われる事例も出てくるでしょう。
ひき逃げ事件に対しては,「実際に事故の現場から逃げている」という事情から,逮捕されやすい事件です。ひき逃げが成立するのは,①事故を起こしてしまったかもしれないという認識がありながら,②果たすべき義務を果たさなかった,という場合です。
特に①事故を起こした,という認識があったかどうかという点は,実際に裁判でも問題になることが多い論点です。電動キックボードは自動車と比べれば外装がない分,「事故を起こしたかどうか分からない」という事案は少ないようにも思われますが,今後裁判でも争点になるかもしれません。
ひき逃げ事件を起こしてしまったという場合には早急に刑事事件に強い弁護士に相談の上で適切な対応を取りましょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部は刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
当事務所では,車やバイクでの人身事故は勿論のこと,自転車や電動キックボードなどで人身事故を起こした場合についても無料相談を受けることができます。
東京都新宿区にて,電動キックボード人身事故を起こしてしまった場合,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部に御相談ください。

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