Archive for the ‘財産事件’ Category

闇バイト―初犯でも実刑判決?

2021-11-25

闇バイト―初犯でも実刑判決?

いわゆる闇バイトに手を染めてしまったという場合に問題となる罪と、初犯か否かという点と実刑判決について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部が解説致します。
【ケース】
東京都杉並区在住のAは、都内の専門学校に通う21歳の学生です。
Aは浪費家で家族に言っていない借金が増え、返済が滞っていました。
そこで、「高額バイト」「闇バイト」などと書かれているツイートを探し、投稿主とやりとりして内容を聞きました。
その内容は、受け取ったキャッシュカードで現金を引き出し、紙袋に入れて駅のコインロッカーに入れるというものでした。
Aは予めその内容を調べていわゆる特殊詐欺の出し子としての作業であることに気付きましたが、指示に従い指定されたコインロッカーを開けてキャッシュカードを取り出し、近くのATMで残高を全て引き出したうえで元のコインロッカーに金を入れ、キャッシュカードは駅のゴミ箱に捨てました。
数ヶ月後、杉並区を管轄する杉並警察署の警察官がAの自宅に来て、特殊詐欺の受け子をした嫌疑で逮捕しました。

Aの家族は、Aの接見をした弁護士から「前科はないようですが金額次第で実刑判決も考えられます。」と説明を受けました。

≪ケースは全てフィクションです。≫

【高額バイト・闇バイトに注意】

「オレオレ詐欺」「お母さん助けて詐欺」「振り込め詐欺」など、これまで様々な言葉で紹介されている特殊詐欺ですが、未だにその被害は後を絶ちません。
昨年(2020年―令和2年)に発生した特殊詐欺の認知件数は1万3526件で、被害総額は約277億8000万円でした。
あくまで認知件数であり、実際に被害に遭われた方はそれ以上に居られる可能性もあります。

特殊詐欺は、その多くが「架け子」「受け子」「出し子」といった役割に分かれます。
架け子は最初に電話を架けて被害者が受け子に現金やキャッシュカードなどを渡すよう要求し、受け子が被害者宅などに行って現金やキャッシュカードを受け取ります。
出し子は、受け取ったキャッシュカードを使ってATM等で現金を引き出すか、別の口座に送金するという役割を担います。
後者については、いくつかの口座を転々とさせることで実際に金を受け取る者が分からないようにする目的があります。
ケースのように「高額バイト」「闇バイト」などと称して募集される人員は、多くが受け子や出し子といった検挙されやすい役割を任されます。
受け子や出し子については、事前に言われていた金額を受け取ることができたという場合があるようですが、実際にはお金を受け取れなかったという場合も少なくないようです。

出し子の場合、現金を引き出した場合には窃盗罪が、口座から口座に送金をするなどした場合には電子計算機使用詐欺罪が、それぞれ成立します。
罰条は以下のとおりです。

窃盗罪:10年以下の懲役又は50万円以下の罰金(刑法235条)
電子計算機使用詐欺罪:10年以下の懲役(刑法246条の2)

【前科がなくても実刑判決に?】

前科、あるいは前歴というのは、法律上の言葉ではなく、その定義があるわけではありませんが、その多くが
前科:刑事事件で有罪判決を受けた場合を指します(執行猶予付有罪判決や略式手続による罰金刑・科料を含む)
前歴:逮捕された、あるいは在宅で捜査を受けたものの不起訴になるなどして刑事罰が科せられなかった場合を指します。

刑事裁判では、裁判官が被告人の有罪/無罪と、有罪だった場合の量刑を決めます。
その際、被告人に前科があるのかないのかという点は重要視されます。
一般に、前科があればより厳しい刑事罰を科せられます。

ケースの場合、Aには前科がないことを前提としています。
しかし、前科がないからといって必ずしも執行猶予付の判決が科せられる、という訳ではありません。
とりわけ特殊詐欺は社会問題であり、刑事裁判では厳罰化の傾向にある犯罪です。
特殊詐欺事件の場合、被害金額や役割次第では、前科がなくても実刑判決を受ける可能性が十分にあります。

東京都杉並区にて、高額バイト裏バイトなどといって特殊詐欺の出し子や受け子に加担してしまった場合、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部に御連絡ください。
まずは逮捕・勾留されている方のもとへ接見に行き、事件の内容と前科の有無を確認した上で、実刑判決など厳しい

住宅ローン~遅延していないのに刑事事件に?~

2021-10-14

住宅ローン~遅延していないのに刑事事件に?~

【ケース】
東京都品川区在住のAは、品川区内の会社に勤める会社員です。
Aは仕事以外で収入を得ようと考え投資について調べていたところ、友人から分譲マンションの経営を勧められました。
そこで品川区内にあるコンサルタント会社に相談したところ、「長期固定金利住宅ローン」を利用することで金利が安く抑えられると説明を受けました。
そして契約手続きに進みましたが、書類の中で「自分の住居として使用するための購入ですか」といった趣旨のチェック項目がありました。
Aはコンサルタントに自分の住居としては購入しないがどうすれば良いか確認したところ、コンサルタントは「形式的なことだから問題ないのでチェックを入れてください。」と説明したため、Aはそのとおりにして分譲マンションを購入し、第三者に貸して賃料収入を得ていました。
ローンについては遅滞なく返済し続けていました。

数年後、金融機関から連絡が入り、分譲マンションの件で聞きたいことがあると言われました。

≪ケースは全てフィクションです。≫

【詐欺罪について】

まずは詐欺罪の条文について確認します。
条文は以下のとおりです。
刑法246条1項 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
 2項 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

詐欺罪に当たる行為とは、
・加害者が被害者を欺罔する(騙す)
・被害者が錯誤に陥る(騙される)
・被害者が加害者に財物を交付した
・一連の流れに因果関係が認められる
とされています。
例えば、加害者側に欺罔する意思はなく誤って料金を請求した場合や、被害者側が勘違いして財物を渡してしまった場合などには、詐欺罪は成立しません。

ケースについて検討すると、Aは実際には不動産投資の目的で分譲マンションを購入しようとしているにもかかわらず、長期固定金利住宅ローンの契約をするため、自分が住む家であると嘘を吐くことで金融機関を欺罔し、金融機関はその書類を以て錯誤に陥り、財物を交付していますので、詐欺罪にあたります。

ちなみに、Aはコンサルタントに「形式的なことだから問題ない」という説明を受けていますが、たとえそのような説明を受けていたとしても、A自身が書面で虚偽の申告をしている以上、詐欺罪は成立します。

【返済していても罪に当たる?】

とはいえ、Aはローンについて、滞りなく返済を続けています。
その点で、被害者である金融機関には損失はないようにも思われます。
しかし、詐欺により財物を詐取している以上、たとえ実際の損失がなかったとしても、罪は成立します。
本件に限らず、例えば消費者金融で融資を受ける際に別人の名義で手続きをしたり、職業や収入などを偽るなどした場合には、返済が遅滞なく行われていたとしても詐欺罪にあたります。

反対に、適切な手続きにより融資を受けた場合、返済が滞ったとしても刑事事件の問題にはならず、民事上の争いとなります。
民事上の手続きにより差押えなどに発展する恐れはありますが、刑事罰を受けることにはなりません。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部は刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
当事務所は、詐欺罪などの財産犯を数多く取り扱ってまいりました。
東京都品川区にて、本来は住居用に用いる予定がないにもかかわらず、金融機関を騙すなどして長期固定金利住宅ローンなどを契約してしまい、返済は遅滞なく行われているものの詐欺罪などの刑事事件に発展している場合、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部に御相談ください。

業務上横領事件で保釈請求

2021-10-07

業務上横領事件で保釈請求

会社などのお金を横領した場合に問題となる業務上横領という罪について、及び業務上横領罪などで逮捕・勾留された場合の保釈請求について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部が解説致します。
【ケース】
東京都台東区下谷在住のAは、台東区下谷にある会社で経理を担当していました。
Aは10年ほどに亘り、経費を送金していると偽って自分が作った口座に送金を繰り返し、8000万円ほどの金を横領していました。
内部調査でAの横領行為が発覚したため、会社側はAに対し横領行為をしていないか確認したところAが行為を認めたため、会社の担当者は台東区内を管轄する下谷警察署に被害届を提出しました。
後日、Aは逮捕され、数日後に勾留が決まりました。

Aの家族は、早期の保釈請求を希望し刑事事件を専門とする弁護士に弁護を依頼しました。

≪ケースは全てフィクションです。≫

【横領とは?】

窃盗・詐欺・横領など、財産犯はその手口によって罪が異なります。
簡単に言うと、
窃盗:他人が持っている物を、こっそりと盗み取るような場合
詐欺:相手を騙して、騙された被害者が被疑者に対して金や物を渡す場合
横領:他人から預かっていた物などを黙って自分のものにするような場合
に適用されます。

【横領罪と業務上横領罪】

ケースについて言うと、預かっていたお金を自分の口座に送金する(自分のものにする)と言えるため、横領行為に当たります。
そして、Aは会社のお金を管理する立場でありながら横領行為に着手しているところ、Aには業務上横領罪が適用されることになります。
業務上横領罪の条文は以下のとおりです。

刑法253条 業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、十年以下の懲役に処する。

業務上横領罪は、「業務」であることを要件としています。
業務は、経理などの業務を担当している場合は勿論のこと、それに類する行為は反復・継続して行った立場の方が行った横領行為も、業務上横領罪として処罰されることになります。

【逮捕後の手続き】

刑事事件を起こしたと疑われる者に対し、捜査機関は捜査に必要であると判断した場合には被疑者を逮捕します。
逮捕された被疑者は、逮捕の翌日~翌々日で釈放されるか、勾留請求されて裁判官による勾留質問が行われます。
裁判官が勾留を認めた場合、10日間の勾留が行われますが、一度に限り10日間延長することができるため、勾留された場合には逮捕から3週間程度身柄拘束が行われることになります。
勾留の満期日、検察官は被疑者を起訴するか、処分保留で釈放するかを判断する必要があります。
処分保留で釈放の場合、そのまま身柄解放されることもありますが、釈放される前(あるいは釈放された直後)に別事件の捜査のため逮捕される事案もあります。

起訴された場合、被疑者は被告人という立場に変わり、刑事裁判を受けることになります。
その際、身柄の扱いはというと「被疑者段階での勾留」から「起訴後勾留」に移ります。
起訴後勾留の期間は2ヶ月ですが、満期日には勾留期間が1ヶ月ずつ自動的に延長されるため、判決言い渡しまでの期間はずっと身柄拘束されることになります。

【保釈請求について】

起訴された被告人が起訴後勾留を受けている場合に被告人の身柄を解放するためには、被告人側が保釈を請求することが一般的です。
保釈の請求を受けた裁判官は、まず事件の担当検察官に対して意見を求める「求意見」を行います。
担当検察官は裁判官に対し、被告人の保釈に対しての意見(裁判官の判断に委ねる場合もあれば、例えば証人への口裏合わせの恐れにより正常な刑事裁判が出来なくなる恐れを指摘する等して保釈に反対の意見を示す)を書面で提出します。
検察官から意見が戻ってきた後、裁判官は被告人の保釈をするかどうか、保釈を認める場合には保釈金をいくらにするか、判断します。
裁判官が保釈を許可した場合には、被告人の親族などが保釈金を納めれば、身柄は解放されます。

刑事訴訟法89条では、「保釈の請求があつたときは、次の場合を除いては、これを許さなければならない。」と定められています。
保釈を請求できるのは、被告人自身や弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直径の親族若しくは兄弟姉妹ですので(同法88条)、被告人自身やその家族が請求すれば簡単に通るだろうとも思う方がおられるかもしれません。
しかし、前科がある場合はそれに触れる必要があるほか、前科がない方でも「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由がある」(4号)と評価されないよう、身元引受人がしっかり監督して出廷を確保することを誓約していることなどをしっかりと主張していかなければなりません。
これらの事情を的確に指摘することは、法律の知識が多くない一般の方には難しいと思われます。

東京都台東区下谷にて、家族が業務上横領罪などで逮捕されてしまい、起訴後に行われる保釈の手続きについて知りたいという方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部に御相談ください。

万引き事件が強盗扱いに?

2021-08-05

万引き事件が強盗扱いに?

20歳未満の少年が万引きをしようとしたところ店員等に見つかってしまい、逃走する際に暴行を加えるなどした結果「強盗」扱いされる場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部が解説致します。
【ケース】
東京都荒川区に住むAは、都内の高校に通う17歳の高校生です。
Aは事件の数か月前から、荒川区内にある書店に行き、欲しい漫画を繰り返し万引きしていました。
事件当日も、Aは鞄を持っていき漫画コーナーで人がいないことを確認して、自分のバッグに未購入の漫画本3冊を入れて店を出ようとしました。
しかし、以前からAが万引きをしていることに気づきマークしていた店員Vは、Aが店を出たタイミングで声掛けし、バッグの中を見せるよう言いました。
Aは万引きが発覚したことを察知し、逃げようとしましたが、Vに手を握られて逃げるタイミングを逸しました。
そこで、Vの腕に蹴りを入れ、Vが転倒した隙にAはその場を離れました。

荒川区を管轄する尾久警察署の警察官は、Vの通報を受けて付近のパトロールを開始し、Vの言う被疑者と特徴が酷似していたAが見つかったため声掛けし、Aの取調べを開始しました。

≪ケースはすべてフィクションです。≫

【万引き行為】

御案内のとおり、万引きは窃盗罪にあたります。
窃盗罪の条文は以下のとおりです。
刑法235条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

万引き事件について、軽く考えている方・少年も多くいるようですが、捜査するうえでやむをえないと判断された場合には逮捕・勾留されることがあります。
また、万引き事件の場合、被害店舗は買取には応じるが示談には応じないという態度を示す場合も少なくないため、初犯でも略式起訴による罰金刑で前科が付く場合もあり、転売目的で繰り返し万引きをしていたような事案であれば初犯でも公判請求ということが十分に考えられます。

【万引きが強盗に?】

Aは万引きをしたうえで、更に制止しようとした店員Vに対して暴行を加えています。
これは、万引き窃盗罪)ではなく「事後強盗」という罪に当たります。
条文は以下のとおりです。

刑法238条 窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために暴行または脅迫をしたときは、強盗として論ずる。

万引きをした被疑者が、店員や警備員、目撃者などの制止を振り切り逃走しようとすることは、少なくありません。
しかし、その過程で被害者に暴行を加えたり、脅迫したりして逃走した場合には、もはや窃盗罪ではなく、事後強盗罪として扱われることになるのです。
事後強盗罪は強盗として論ずると定められていますので、
被害者が怪我をしていない:五年以上の有期懲役
被害者が怪我をした   :無期または六年以上の懲役
被害者が死亡した    :死刑または無期懲役
という厳しい刑罰が科せられます。

【少年事件での弁護・付添人活動】

万引き事件は、少年事件でもよく見られる罪の一つです。
ある程度身体が大きくなっている少年であれば、制止された店員や警備員、目撃者に対して暴行を用いるなどして逃走を図ることは十分に考えられます。

少年事件も、成人の刑事事件と同様に捜査段階で逮捕・勾留される可能性があるほか、捜査が終了した段階で家庭裁判所に送致されたのち、観護措置決定が下され少年鑑別所に入所することになる可能性があります。
少年事件の場合
・身柄対応(事件の内容や少年の環境を総合考慮し、釈放を目指す主張。身柄拘束が長期に亘る場合の頻繁な接見、心理的ケア。)
・取調べ対応(少年に手続きや言葉の意味などを説明し、間違った供述調書を作らせないための活動。)
・示談交渉(被害者との示談交渉。)
・環境調整(少年を社会内で更生させるための環境調整。)
・学校対応(学校に対して寛大な措置を求める等の対応。)
・調査官対応(家庭裁判所送致後、少年の事件後の内省や環境調整ができていることの主張等。)
など、様々な弁護活動・付添人活動があります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部は、刑事事件・少年事件のみを扱っている弁護士事務所です。
東京都荒川区にて、お子さんが万引きをしたところ店員等に見つかってしまい、逃走する際に暴行するなどして事後強盗事件に発展した場合、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部にご連絡ください。

窃盗事件で自首

2021-05-06

窃盗事件で自首

窃盗事件を起こした場合の罪と、自首の要件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部が解説致します。
【ケース】
東京都品川区大井在住のAは、品川区大井にある会社に勤める会社員です。
ある日、Aが品川区大井の道を歩いていたところ、飲食店の裏口に、酒屋が届けたビール瓶がケースに入れられ置いてあることに気が付きました。
それを見たAは、無意識のうちにそのビール瓶3本をバッグに入れ、自宅に持ち帰ってしまいました。
しかし、Aの家族がそのビール瓶を見て、Aに問うたところ、Aは盗んでいったことを認めました。
そこで、Aの家族はAを説得し、品川区大井を管轄する大井警察署に自首するよう説得しました。

≪ケースは全てフィクションです。≫

【窃盗事件について】

ケースの場合、Aは、酒屋が飲食店の裏口に商品を納品したビール瓶を3本、盗っています。
酒屋は、飲食店との取り決めでビール瓶を裏口に納品している(置いている)と考えられますので、この場合のビール瓶は飲食店の占有下にあるものと考えられます。
よって、そのビール瓶を持ち去る行為は、窃盗罪に当たると考えられます。
窃盗罪の条文は以下のとおりです。

刑法235条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

【自首について】

事件を起こしてしまった当事者が警察などに行くことを自首と呼びます。
自首は、刑法42条1項で「罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる。」と規定されています。
ここでしばし問題となるのが、「捜査機関に発覚する前に」という点です。
この点について、判例は「犯罪の発覚前」又は「犯人の誰であるかが判明する前」を意味するとしています。(最判昭24.5.14)
例えば、街中で貼られている氏名手配のポスターなどで手配されている被疑者が警察に行ったとしても、それは出頭であり自首にはあたりません。
暫し、自分が今から警察に行けば自首になるのでしょうかという質問を頂きますが、これについては「捜査機関による捜査の進捗次第」となります。
もっとも、御自身の携帯電話に警察署から連絡が来ている場合や、(一軒一軒ではなく)御自宅にピンポイントに警察官が来た場合には、既に「犯人の誰であるかが判明」していると考えられます。

【自首した際の手続】

自首した場合には逮捕される場合と、在宅で捜査が進められる場合があります。
いずれの場合でも、警察官などの捜査機関は自首したことについての調書を作成する必要があります。(刑事訴訟法245条、同241条、同242条)
また、自首した際に警察官が員面調書(司法警察員面前調書、俗に供述調書と呼ばれるもの)を作成することが多いです。
員面調書は被疑者の他に関係者が対象となる場合がありますが、被疑者の場合、員面調書の作成に際して取調べが行われるため、その前に弁護士に相談・依頼をすることをお勧めします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部は刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
当事務所の弁護士は、自首する前の御相談についても承っております。
東京都品川区大井にて、窃盗事件を起こしてしまい自首を検討している方、自首した後の流れについて知りたいという方がおられましたら、捜査機関への発覚前に、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部に御連絡ください。
事務所にて無料で御相談いただけます。
無料相談予約窓口:0120-631-881

車上荒らしで少年院へ

2021-04-08

車上荒らしで少年院へ

未成年者が車上荒らし事件を起こしてしまい、少年院送致される場合の弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部が解説致します。
【ケース】
東京都大田区池上在住のAは、高校を卒業後アルバイトをして実家暮らしをしている18歳です。
Aは車に興味があるため高級スポーツカーを買いたいと思っていたのですが、アルバイトではなかなか収入が得られないため、手っ取り早く金を得たいと考えていました。
そこで、Aは高校生時代の後輩3人を引き連れ、夜な夜な大田区池上付近の路上や駐車場に駐車されていた車を狙い、窓ガラスを金属パイプで叩き割って中から金品を奪う車上荒らしをしていました。

大田区池上を管轄する池上警察署の警察官は、一連の車上荒らし事案の捜査を行い、Aらによる犯行であるとの裏付けをとったうえでAらを逮捕しました。
Aの家族は、Aが逮捕されたことから少年院に送致されてしまうのか不安になり、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士に初回接見を依頼しました。

≪ケースは全てフィクションです。≫

【車上荒らしについて】

ケースのような事案については、車上荒らし・車上狙い・車上盗など、様々な呼称があります。
手口としては、バールや金属パイプなどで窓ガラスを割ってドアを開け、車内にある金品を奪うというものです。
車上荒らしは他人の家や事務所などに侵入して行われる窃盗事件とは異なるため、「非侵入盗」と区分されます。
警察庁ホームページ掲載の統計資料を見ると、平成22年には12万4608件が発生していましたが、令和元年には3万7425件にまで減少しています。
ただし車上荒らしは検挙が難しく、検挙件数は20%台に留まっています。

車上荒らしをした場合には、どのような罪にあたるのでしょうか。
まず、その目的であるものを盗む行為が問題になります。
他人の財物を窃取するという行為は窃盗罪に当たります。
また、仮に車上荒らしをしたものの車内から金目のものが見つからなかったため何も盗らずに逃げた場合や、金目のものはあったが盗る前に人が来たのであきらめた場合などには、窃盗未遂罪が成立します。
条文は以下のとおりです。
刑法235条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
(未遂犯処罰規定については刑法243条)

次に、車上荒らしのため車のガラスを破砕するという点が問題となります。
これは、他人の物を毀損することですので、器物損壊罪の成立が問題となります。
条文は以下のとおりです。
刑法261条 前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。

ただし、器物損壊罪については、物を盗る(窃盗罪)という目的のための手段に過ぎないため、牽連関係となりより重い罪である窃盗罪のみの刑で処罰されることになると考えられます。

【少年院とは?】

少年院は、20歳未満の少年が家庭裁判所で審判を受け、裁判官が少年院送致を言い渡した場合に送致される施設です。
少年院にいる法務教官等の指導を受け乍ら、自分の問題を見つめ、改善して社会復帰するための施設です。
そのため、本人の内省を深めるための授業だけでなく、生活指導や義務教育・高校卒業程度認定試験受験の指導、職業指導などが行われています。
少年院での生活期間は様々で、最短で4ヶ月、最大で24ヶ月です。
但し、規律違反などが続くとその期間はさらに長くなる可能性があります。
少年院には年齢制限があり、原則として20歳までとなっていますが、手続をすることで26歳まで収容することができます。

少年院に送致された場合、これまでの環境を調整・改善する機会になるというメリットがあります。
一方で、少年院での収容期間中は社会から断絶されるため、その後の生活への影響が懸念されます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部は刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。

東京都大田区池上にて、お子さんが車上荒らしなどの事件を起こしてしまい逮捕され、少年院に送致される可能性がある場合、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部に御連絡ください。
弁護士が接見でお子さんからお話を聞いた上で、少年院送致の可能性や回避のための弁護活動・付添人活動について御説明致します。

落し物を拾ったら何罪?

2021-04-05

落し物を拾ったら何罪?

落し物を拾い、警察署や交番に届け出ずに使ってしまった場合の罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部が解説致します。
【ケース】
東京都荒川区荒川在住のAは、荒川区荒川にある飲食店に勤めるアルバイト店員です。
ある日、Aは荒川区荒川にある図書館を利用していたところ、共有スペースの机に財布が置いてあることに気が付きました。
Aはその財布を注視して5分ほど待ち続けましたが、持ち主は現れませんでした。
そこで、Aは財布を手にしてトイレに向かい、財布と現金を抜いてカード類はトイレに流し、図書館からの帰り道に財布は捨てて帰りました。
後日、Aの自宅に荒川区荒川を管轄する荒川警察署の警察官が来て、図書館で財布が無くなった件について警察署で話を聞きたいと言いました。

≪ケースは全てフィクションです。≫

【落し物に関する罪】

誰しも一度は、落し物を届けたという経験があるかと思います。
御案内のとおり、落し物をした場合には最寄りの交番や警察署に行き、届出する必要があります。
では、それを届け出ずにその落し物を持ち去った場合にはどのような罪に問われるのでしょうか。
以下で検討します。

〇遺失物横領罪・占有離脱物横領罪
基本的に、落し物を届け出ずに持ち去った場合には遺失物横領罪・占有離脱物横領罪が適用されます。
条文は以下のとおりです。

刑法254条 遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金若しくは科料に処する。

ここで規定されているのは、占有離脱物横領罪であり、遺失物横領罪はその例示であるとされています。
持ち主がその場に忘れて行った物を盗った場合には遺失物横領罪が、意識して置いた上でその場を立ち去っていた場合などには占有離脱物横領罪の罪名が、それぞれ付くと考えられます。

〇窃盗罪
上述のとおり、基本的には落し物を盗んだ場合には占有離脱物横領罪・遺失物横領罪が適用されますが、それを拾得した場所によっては窃盗罪が適用される可能性があります。
窃盗罪の条文は以下のとおりです。

刑法235条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

確かに、どのような場所であれ忘れ物である以上は占有を離れたものと言えそうです。
しかし、例えば商業施設やパチンコ店、ケースのような図書館などの場合、たとえ落し物であってもその占有は商業施設やパチンコ店、図書館にあるとされ、窃盗罪が適用される可能性があります。
なお、例え占有する商業施設やパチンコ店、図書館などの担当者が落し物についての認識がなかったとしても、占有は認められ窃盗罪が適用されます。

【落し物を盗んで弁護士へ】

御案内のとおり、昨今は防犯カメラ・監視カメラの普及により被疑者が特定されやすく、出来心とはいえ落し物を盗んだことで警察が捜査を行い被疑者を特定するということは多々ございます。
その場合に、上記の遺失物横領罪・占有離脱物横領罪が適用されるのか、窃盗罪が適用されるのかは、その罰条の違いから極めて重要です。
加えて、取調べでの応答や示談交渉の有無などが終局処分を左右する場合が多いです。
そのため、落し物を盗んでしまった場合、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士に弁護を依頼することが望ましいと言えるでしょう。

東京都荒川区荒川にて、落し物や忘れ物の財布を盗んでしまい、警察官から呼び出しを受けたり既に取調べを受けたりしている方がおられましたら、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部に御連絡ください。
在宅事件の場合、事務所にて無料で御相談いただけます。

要予約:0120-631-881

国際ロマンス詐欺で保釈

2021-03-11

国際ロマンス詐欺で保釈

国際ロマンス詐欺と呼ばれる犯罪と、その場合の保釈について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部が解説致します。
【ケース】
東京都北区神谷在住のAは、北区神谷にある会社に勤める会社員です。
Aには借金があり、その借金を返済するために詐欺行為をしようと考えました。
そこで、Aは会社の同僚である北区神谷在住のVが職場で席を外した際にVの机上にあったスマートフォンを起動し、SNSのアカウントを知りました。
その後、SNSでVと接触し、「自分は日本に憧れていて日本人と結婚したいと思っている。しかし、自分が日本に行くためには母国での人間関係を清算する必要があり、その為にお金が必要だ」というメッセージとともに、インターネット上で探した外国人の写真を添付しました。
Vは、「結婚してくれるなら送金するよ」と返答し、Aが「手切れ金として30万円が必要」「友人から借りた金を返すために100万円が必要」などと言い、その都度金を送金していました。
しかし、Vの話を聞いたVの友人は不審に思い、Vとその友人とは北区神谷を管轄する赤羽警察署に行って話をし、そこで国際ロマンス詐欺である可能性を指摘されました。
Vは被害届を提出し、後日、捜査の結果Aによる犯行であると裏付けを取った赤羽警察署の警察官はAを国際ロマンス詐欺をしたことによる詐欺罪で通常逮捕しました。

≪ケースは全てフィクションです。≫

【国際ロマンス詐欺について】

国際ロマンス詐欺という言葉を御存知でしょうか。
しばし報道でも取り上げられるこの詐欺事件は、現代特有の事件の一種と言えます。

国際ロマンス詐欺は、その国から日本に来るためにお金が必要、あるいは自分は軍人で退役するためには金が必要などと嘘をつき、そのお金があれば貴方と結婚が出来ると嘘をついて金をだまし取るという手法で、日本国内だけでなく海外のどの場所に居てもスマートフォン一つで連絡が取り合えるこの時代だからこそ生じる得る犯罪です。

国際ロマンス詐欺は、SNSやいわゆる婚活サイトを通じて外国人(あるいは外国人を名乗る日本人)からフォローをされたり、DMが送られてくることから始まるようです。
報道などでよく聞く手口としては、現役軍人や医師であるなどと身分を偽り、妻とは死別したので退役して貴方と結婚したいなどの甘言で被害者を騙し、渡航費用や荷物の郵送費などの名目で金銭を要求してきます。
特殊詐欺全体を見ると未だオレオレ詐欺などの手口が大多数を占めますが、国際ロマンス詐欺で億単位の被害が出ている事例もあるため、十分に注意が必要です。

国際ロマンス詐欺は、被害者が被疑者・被告人と結婚するあるいは結婚を前提に交際するなどという嘘を前提に、偽りの名目で相手に金員を要求して被害者を錯誤に陥らせた上で、送金等させるという手口で行われるため、詐欺罪が適用される可能性があります。

刑法246条1項 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。

【保釈について】

刑事事件を起こした場合、在宅で捜査を進める場合もありますが、逮捕・勾留をして身柄を拘束したうえで捜査を進める場合があります。
両者の違いは、証拠隠滅の恐れがあるか否か、逃亡の恐れがあるか否か、といった点が挙げられます。

被疑者が逮捕された場合、裁判官の判断により、勾留請求された日から最大で20日間、警察署の留置施設などで勾留されます。
勾留満期日になると、検察官は被疑者を起訴するか、処分保留で(又は略式手続による罰金納付後に)釈放する必要があります。
ここで起訴された場合、被疑者は被告人という立場になり、刑事裁判を受けることになります。
勾留された被疑者が起訴されて被告人になった場合、その多くは起訴後勾留というかたちで引き続き身柄を拘束されます。
その際、被疑者勾留の時点で警察署の留置施設での身柄拘束を受けていた方は、拘置所という場所に移送される可能性があります。
起訴後勾留は2ヶ月ですが、その後も1ヶ月毎に延長をすることができるため、判決言渡しまで身柄拘束が続くことも考えられます。
それを回避するため、弁護士は保釈請求を行い、保釈金を納付することで被告人の身柄の釈放を求める必要があります。

東京都北区神谷にて、御家族が国際ロマンス詐欺事件を起こしてしまい保釈についてお考えの方がおられましたら、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部に御連絡ください。

民家に押し入って泥棒 共犯事件に強い弁護士②

2021-02-11

民家に押し入って泥棒した事件を例に、共犯事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。

~前回からの流れ~

東京都西多摩郡に住むAさんは、先日会社を解雇され、無職となりお金に困っていました。
そんな中、Aさんは数年ぶりにパチンコ店で会った知人の男Bさんから、「お金に困っているの?」「空き巣の家を見つけたから家に入って貴金属を盗ってそれを売って金にしよう」ともちかけられ、この話に乗ることにしました。
犯行日当日、犯行場所で、AさんはBさんから「俺が中に入ってやるから、誰も来ないかどうか外で見張りをしていてくれ」と言われました。
そして、Aさんは外で見張りをしていたところ、被害者宅から貴金属を盗ってきたBさんから「中におばさんがいた。貴金属の在りかを吐かなかったので、ナイフで脅した」と言われました。
その後、AさんとBさんは現場から逃走しました。
そして、数か月後、警視庁青梅警察署に、Aさんは邸宅侵入罪と窃盗罪の共犯、Bさんは住居侵入罪と強盗罪で逮捕されてしまいました。
(フィクションです)

はじめに(前回のおさらい)

前回は、共犯の概要についてご説明いたしました。
おさらいすると、共犯は次のように区分されました。

最広義の共犯 ――――― 必要的共犯
         |        (広義の共犯)        
         | 
         |―― 任意的共犯 ―――― 共同正犯 
                   |
                   |――― 教唆犯
                   |        (狭義の共犯)
                   |――― 幇助犯

今回は、まず、教唆犯、幇助犯についてご説明いたします。

教唆犯(刑法61条1項) 

教唆犯とは、人を教唆して犯罪を実行させた者をいいます。
教唆犯が成立するには、

・人を教唆すること
・それに基づいて被教唆者が犯罪を実行すること

の2つの要件がそろうことが必要です。

* 教唆とは *
教唆とは、まだ犯罪に対する実行の決意をしていない他人を唆して、犯罪実行の決意を生じさせることをいいます。
この点が、すでに犯罪の実行を決意している者の犯行を容易にする幇助と大きくことなるところです。
教唆犯は、自ら犯罪を実行した者(正犯者といいます)と同様の地位にあることから、教唆犯にも正犯者と同様の刑を科すとされています。
教唆は、特定の犯罪の実行を決意させるに足りるもでなければなりませんから、単に「やってこい」とか「殺人をせよ」などと漠然と言っても教唆には当たりません。

幇助犯(刑法62条1項) 

幇助犯とは、正犯を幇助した者をいいます。
幇助犯が成立するには、

・人を幇助すること
・被幇助者が犯罪を実行すること

の2つの要件がそろうことが必要です。

* 幇助とは *
幇助とは実行行為以外の行為をもって正犯を援助し、その実行行為を容易にすることをいいます。
上でご説明いたしましたが、幇助は、すでに犯罪実行の決意のある者の犯行を容易にする点が教唆と異なるところです。
そのため、正犯者より責任が軽いと考えられており、幇助犯の刑は正犯の刑を減軽する(必要的減軽)とされています(刑法63条)。

Aさんに強盗罪は成立しないのか? 

最後に、本件の、Aさんの罪責、Bさんの罪責についてご説明いたします。
前回のコラムでは、Aさんには、邸宅侵入罪、窃盗罪が成立するとご説明いたしました。
では、Bさんは強盗罪に当たることをしていることから、Aさんにも強盗罪に問えないかが問題となります。
しかし、判例の考え方は、「Aさんが窃盗罪の認識であれば、強盗罪と『重なり合う』窃盗罪の範囲でのみ刑責を負う」としています。
何をもって重なり合うとするのかは別の機会に解説を譲ることにして、Aさんとしては、Bさんが強盗罪を犯すことは意外だったのですから、強盗罪まで責任を負わせるのは酷だという考えです。
ごく当たり前といえば当たり前の結論です。

一方の、Bさんは強盗罪についてはAさんと共謀していないのですから、邸宅侵入罪、強盗罪の単独犯としての責任を負うことになります。

共犯事件に強い弁護士

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部は、窃盗事件をはじめとする刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
共犯事件についてのご相談も受け付けております。
刑事事件少年事件でお困りの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。
無料法律相談、初回接見サービスのお問い合わせを24時間受け付けております。

民家に押し入って泥棒 共犯事件に強い弁護士①

2021-02-08

民家に押し入って泥棒した事件を例に、共犯事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。

民家に押し入って泥棒

東京都西多摩郡に住むAさんは、先日会社を解雇され、無職となりお金に困っていました。
そんな中、Aさんは数年ぶりにパチンコ店で会った知人の男Bさんから、「お金に困っているの?」「空き巣の家を見つけたから家に入って貴金属を盗ってそれを売って金にしよう」ともちかけられ、この話に乗ることにしました。
犯行日当日、犯行場所で、AさんはBさんから「俺が中に入ってやるから、誰も来ないかどうか外で見張りをしていてくれ」と言われました。
そして、Aさんは外で見張りをしていたところ、被害者宅から貴金属を盗ってきたBさんから「中におばさんがいた。貴金属の在りかを吐かなかったので、ナイフで脅した」と言われました。
その後、AさんとBさんは現場から逃走しました。
そして、数か月後、警視庁青梅警察署に、Aさんは邸宅侵入罪と窃盗罪の共犯、Bさんは住居侵入罪と強盗罪で逮捕されてしまいました。
(フィクションです)

共犯とは

Aさんは共犯として逮捕されていることから、まずは、共犯の意義についてご説明いたします。

最も広い意味での共犯(最広義の共犯)とは、2人の以上の行為者が犯罪に加功した場合をいいます。
最広義共犯は任意的共犯と必要的共犯とにわけられます。
任意的共犯とは、本来は単独犯による犯罪実現が予定されている通常の構成要件(犯罪成立のための要件)を2人の以上の行為者が実現する場合をいい、広義の共犯ともいいます。
広義の共犯には

・共同正犯(刑法60条)
・教唆犯(刑法61条)
・幇助犯(刑法62条)

があり、教唆犯と幇助犯を狭義の共犯といいます。
必要的共犯とは、構成要件上、2人以上の行為者による犯罪実現を予定して規定されている犯罪をいいます。
例として、

・内乱罪(刑法77条)
・騒乱罪(刑法106条)
・贈賄罪(刑法198条)と収賄罪(刑法197条ないし197条の4)

があります。
このうち前二者を集合的犯罪(同一の目標に向けられている数人の行為者の集団的行為を独立の構成要件とするもの)と呼ぶのに対し、贈賄罪と収賄罪のように、相反する数人の行為者の対立的行為を独立の構成要件とする犯罪を対立的犯罪とも呼びます。
以上を図にすると以下のとおりとなります。

最広義の共犯 ――――― 必要的共犯
         |        (広義の共犯)        
         | 
         |―― 任意的共犯 ―――― 共同正犯 
                   |
                   |――― 教唆犯
                   |        (狭義の共犯)
                   |――― 幇助犯

共同正犯とは?

以上、一言で共犯といっても様々な種類があり、分類されることはお分かりいただけたと思います。
必要的共犯の場合は、犯罪そのものが共犯の形式を取りますから、任意的共犯、つまり、共同正犯、教唆犯、幇助犯が適用される余地はありません。
では、その他の犯罪の場合、任意的共犯が適用されるのはどんな場合なのでしょうか?
まずは、共同正犯から見ていきたいと思います。

共同正犯は刑法60条に規定されています。

刑法60条
2人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。

正犯あるいは正犯者とは、犯罪(基本的構成要件)に該当する行為(実行行為)を行う者のことをいいます。
刑法60条は、意思の連絡(共謀)の下に複数の者が関与した事案において、自己の犯罪を犯したと評価し得る重要な関与者を正犯とし、他人(Bさん)の実行行為及び結果につき、共同して行えば全て帰責される(刑事責任を負わされる)という「一部行為の全部責任の原則」を認める規定です。

共同正犯の成立要件 

それでは、共同正犯が成立するためにはいかなる要件が必要なのでしょうか?
言い換えれば、他人が行った行為及びそれによって作出された結果を仲間内である共犯者にも帰責させるための要件とはいかなるものなのでしょうか?
共同正犯が成立するためには、主観的要件としての「共同実行の意思(意思の連絡=共謀)」、客観的要件としての「共同実行の事実」が必要です。

= 共同実行の意思 =
共同実行の意思とは、共同して実行行為をしようという意思のことをいいます。
共同加工の意思ともいわれます。
共同実行の意思は、2人以上の行為者全員が相互に持たなければなりません。
したがって、甲がVに暴行を加えている間、甲の知らない間に乙がVの財布を盗んだという場合、窃盗罪(あるいは暴行罪)の共同正犯は成立しません。

= 共同実行の事実 =
共同実行の事実とは、共謀した行為者が実行行為を分担することであり、共同加功とか行為の分担ともいわれています。

* 共謀共同正犯 *
ところで、共同して犯罪を行う場合、一部の者が指示役、残りの者が実行役というように、役割分担が決められている場合があります(近年、はやりの特殊詐欺がまさにこれに当たります)。
しかし、指示役は実際に犯罪を実行していませんから「共同実行の事実」が認められず、刑事責任を問えないかのようにも思えます。

そこで、判例は共謀共同正犯という理論を用いて、指示役にも共同正犯としての刑事責任を負わせています。
共謀共同正犯とは、2人以上の者が犯罪の共謀をし、そのうちある者が実行をすれば、実行を分担しなかった者の含めて共謀者の全員が共同正犯となるとする理論です。

今回の事件を検討

では、上記要件を本件に当てはめてみましょう。
まず、「共同実行の意思」ですが、AさんはBさんから「空き巣に入って貴金属を盗ってそれを売って金にしよう」ともちかけられ、Aさんはそれに対し「承諾」しています。
Bさんの誘いは、要は邸宅侵入罪及び窃盗罪の誘いであって、相互に意思連絡があると認められます。
ですから「共同実行の意思」の要件は満たします。

次に、「共同実行の事実」ですが、本件の実行行為を行っているのはBさんです。
しかし、上記でご説明したとおり、実行行為を分担していなくても共同正犯の成立を認めるのが現在の実務です。
しかも、Aさんは現場周辺で見張りをしています。
したがって、「共同実行の事実」の要件も満たしそうです。

以上より、Aさんは邸宅侵入罪、窃盗罪共犯(共同正犯)で逮捕されています。

本件の疑問点

しかし、ここで一つの疑問がわきます。

・Bさんは強盗の罪を犯した
・Aさんには影響はないのか?Aさんの罪責は?

という点だと思います。
そこで、次回は、教唆犯、幇助犯についてご説明した上で、この点についてもご説明したいと思います。

共犯事件に強い弁護士

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